トップ国際台湾民衆党党首逮捕に台湾騒然 清新イメージ崩れた柯文哲氏 有権者失望 揺らぐ第3政党

民衆党党首逮捕に台湾騒然 清新イメージ崩れた柯文哲氏 有権者失望 揺らぐ第3政党

柯文哲氏(E PA時事)

台湾の第3政党・民衆党の柯文哲主席(党首、65)が逮捕され、台湾社会を騒がせた。柯氏は1月の総統選に候補者として出馬し、清新なイメージを前面に打ち出して戦った。ところが、8月に入り政治献金や選挙補助金などに関係する疑惑が相次ぎ、支持が下落。柯氏は潔白を訴えているが、自身が作り上げてきたイメージが損なわれたことに対する政治的な痛手は大きい。(宮沢玲衣)

民衆党は柯氏の「ワンマン政党」色が濃いだけに、柯氏の一連の事件の結果によっては、民衆党が存続できないのではともささやかれている。過半数政党がない立法院(国会)の運営にも影響すること必至だ。

柯氏は8月31日、汚職容疑で逮捕された。現職の政党党首が、金銭スキャンダルによって逮捕されるのは異例の事態だ。柯氏は台北市長だった2020年に台北市中心部にある商業施設の開発で、業者に対して容積率引き上げの便宜を図った疑いが持たれている。容積率は敷地に対してどのくらいの空間を使用できるか定めたもので、問題になったビルは20年の再建計画で840%までに引き上げられていた。

台湾社会を騒がせている柯氏の金銭スキャンダルは他にも、政治献金の不正会計や、選挙補助金4300万台湾ドル(約1億9250万円)を使用し、柯氏の個人名義で不動産を購入していたことなどで疑惑が持たれている。

民衆党は先月29日、会見を行い政治資金の会計報告について、約1937万5409台湾ドル(約8700万円)分が会計から漏れる、または間違って記載されていたと発表。「賄賂性のあるものはない」と不正疑惑を否定している。

総 統 選 前 日 に 支 持 者 か ら 熱 烈 な 支 持 を 受 け た 柯 文 哲 氏 1 月 12 日 、 台 湾 台 北 市

柯氏は与党・民進党と最大野党・国民党に不満を持つ若年層や、両党の「腐敗」を嫌った台湾人の受け皿となった。矛盾するような発言も見られたが、従来の政治家のイメージと異なった言動や、既得権益を鋭く批判する姿勢などで若年層の支持を集めた。

柯氏は普段、自信に満ち溢(あふ)れ、話すときは上から目線だが、カメラの前に見せる姿は頭を抱えてため息をつくなど弱々しい姿を見せている。今月2日未明に釈放された際に、自身の立場を「(検察が)うそのストーリーを作り上げた。極度の抑圧といじめを受けた」と主張し、自身は「被害者」との立場を取った。家宅捜索や未明に及ぶ長時間の聴取などの検察の捜査は不当だと訴えている。民衆党は、柯氏への数々の疑いは、違法性はなく潔白であると主張している。

台湾紙「中国時報」は1日、民衆党について「最終的な判決がどうであれ民衆党が起死回生を狙うならば、矛先が向かうのを防ぐため、早急にワンマン政党の思考から抜け出して、柯文哲を含む誰かが担保しなければ『柯の滅亡はグループの滅亡』の危機に陥る」と評した。

民衆党は柯氏が台北市長時代の19年に設立した政党。今年1月に総統選と同時実施された立法委員(国会議員)選挙(定数113)で8議席を獲得した。民進党51議席、国民党52議席で共に単独過半数に届かなかったことから、民衆党が議会でキャスチングボートを握ることとなり、「柯文哲が本当の立法院長(国会議長)」とささやかれるほど存在感を高めていた。

民間団体「台湾民意基金会」が先月20日に発表した世論調査によると、民衆党の支持率は13・8%。最も支持率が高かった昨年11月の25・3%から大幅に下がっている。柯氏の求心力が低下した民衆党が草刈り場となり、民進、国民の多数派工作も強まりそうだ。今のところ1議席国民党が多く、無所属に親中色の強い議員もおり、民進党の頼清徳政権にとって議会運営は予断を許さない。

台湾司法によって、柯氏に有罪判決が下されるかどうかは不明だが、築き上げてきた清新なイメージは崩れた。ある種の「熱狂」とも取れた柯氏の人気は下火になり、有権者への失望感は広がっている。総統を目指す柯氏にとって、厳しい状況は続くだろう。

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