台湾の頼清徳政権が樹立して約2カ月。政権発足前後から台湾独立勢力として警戒心を露(あら)わにする中国は金門島近海での台湾漁船拿捕(だほ)、拿捕強化を見据えた中露軍事演習を行い、中国軍機の中間線越えが過去最多。中台統一への軍事的布石を着々と進めている。(南海十三郎)
中国海軍はロシア海軍太平洋艦隊との合同軍事演習「海上連合―2024」を台湾海峡に近い南シナ海海域で15日から3日間、中国南部海域で行った。15日、南シナ海に面した広東省湛江港での式典後、両国の艦艇が沖合に出発。
停泊地防御、偵察・早期警戒、合同捜索・救助、合同防空・ミサイル迎撃などの演習を行った。14日、演習地に入る前には臨検の軍事教練も行ったとしており、台湾漁船の拿捕も視野に入れたものだ。
2日、中国大陸に近い台湾の金門島周辺海域で台湾漁船が中国海警局に拿捕された。漁船は台湾西部の澎湖諸島の所属で漁船に乗船していたのは台湾籍2人、インドネシア国籍3人の5人。
拿捕された地点は台湾側が設定した制限水域外で、中国側の領海内。現場周辺には中国海警局の船が7隻も集結していた。台湾当局は中台の船がいずれも操業している海域だったと主張し、即時解放を求めている。
金門島沖では今年2月、台湾当局船の追尾を受けた中国漁船が転覆し、乗っていた中国人2人が死亡。中国海警局は金門島付近でのパトロールを強化すると表明して緊張が高まっている。
10日、頼清徳台湾総統は米国の対台湾窓口機関である米国在台協会(AIT)のグリーン台北事務所長(大使に相当)と総統府で会談。同副所長を経験したグリーン氏は9日、着任し、「米国は台湾の自衛力、防衛力を支え続ける」「台湾の民主主義を護持し、米台関係を新たな高みに引き上げられるはずだ」と述べた。
台湾国防部(国防省)によると、これに猛反発する形で台湾周辺で11日午前6時までの24時間に中国の軍用機延べ66機が活動し、このうち延べ56機が台湾海峡の中間線を越えるなどして台湾側に飛来。中間線を越えた中国軍機の数は過去最多。中国空母「山東」は9日に沖縄県宮古島南方で戦闘機やヘリコプターの発着艦訓練を実施した。10日午前には中国軍機延べ36機が西太平洋へ向かい山東と訓練。台湾を自国の領土と主張する中国の軍事的威嚇が強まっている。
トランプ前米大統領は銃撃を受ける前、ブルームバーグとの単独インタビューで「米国は長年、台湾を守ってきたが、台湾は米国に何をしてくれたか。ICチップ事業を100%奪ったので代償、保険契約が必要」と述べ、「米国に保護費(防衛費の一部負担)を支払わなければならない」と発言したことが今後の米台関係を左右しそうだ。
元幹部自衛官らでつくる民間シンクタンク「日本戦略研究フォーラム」は13、14日の両日、台湾有事に関するシミュレーション会合を東京都内で開き、小野寺五典元防衛相ら自民党の国会議員や米国の元政府高官、台湾国防部の元軍人、台湾与党・民進党の立法委員(国会議員)も参加した。
2027年2月、中国の軍事演習が台湾侵攻へエスカレートして戦争になると仮定し、日本代表の長島昭久衆議院議員が米国務長官、小野寺氏が日本の首相、台湾の頼怡忠・遠景基金会理事長が台湾総統を演じて未来予測を検討。
台湾総統役の頼怡忠氏は、日米が台湾に大量の物資と軍用弾薬備蓄を支援すべきで、日本は台湾有事の際、戦争に介入することを明確化して自衛隊の集団的自衛権行使を満たしてほしいと要望。「台湾有事は日本有事」が迫っていることを印象付けている。