日常を取り戻す台湾・花蓮市民 道路寸断、観光への打撃長引く

地 震 に よ り 解 体 さ れ る ホ テ ル 5 月 18 日 、 台 湾 ・ 花 蓮 県
台湾東部・花蓮沖を震源とし、18人が死亡した大規模地震の発生から3日で2カ月を迎える。被害が集中した花蓮県を訪れてみると、花蓮市内の繁華街は休日を楽しむ人たちでにぎわい、被災地であることを感じさせない様子だった。しかし、観光客の姿は少なく、観光業に依存する地元経済の復興が問題となっている。(台湾花蓮県・村松澄恵、写真も)

「70年近く生きてきた中で一番大きくて、怖い地震だった。今も余震は続くが、行く場所さえ気を付ければ安全だ」。花蓮県で貸し切りタクシーの運転手をしている男性は、台湾東部沖で4月3日に発生した台湾中央気象局発表でマグニチュード7・2の地震について記者にこう語った。

報道機関によって映し出される大きく傾いたビルの映像や写真などから、花蓮の人々は壊滅的な被害を受けたという印象を持つ人は多い。

台湾では1999年に起きた大地震の後、耐震基準が改められた。そのため、地震被害は局所的で済んだ。花蓮市内では一部の古い建物が大きなクレーン車で解体されるような現場から離れれば、市民は日常通りの生活を送っている。

市内の繁華街では、新たに開業したお店のお祝いで、花火を数分間にわたり打ち上げていた。地元の人たちは突然の花火に驚きつつも、スマホで撮影するなど、楽しむ様子が見られた。

小売店もレストラン・カフェも営業しており、にぎやかで平穏に見える。ただ、普段に比べると人出が少ないという。

雄大な渓谷で知られる「太魯閣(タロコ)国家公園」は花蓮県で特に有名な景勝地。地震による落石で道路は塞(ふさ)がれ、以前のように入園できなくなった。花蓮県では、農業を含むあらゆる産業が観光に関わっており、同公園内を観光できないことによる痛手はかなり大きい。

地震で落石が起きた「太魯閣国家公園」の山の斜面= 18日、台湾・花蓮県

記者が貸し切りタクシーの予約の電話をしたのは、花蓮県を訪れる前日の金曜日の夜。にもかかわらず、すんなり予約が取れた。冒頭のタクシー運転手は、普段であれば1カ月のうち営業する25日全てが予約で埋まるが、地震後には3組の予約のみで「その3組全てが報道陣だった」と嘆いた。

台北でタクシー運転手をしている中年男性の陳さんに、台北の人は余震が怖いから花蓮に行かないのかと尋ねると、「そうではない。道路が寸断されていて車で行けないからだ」と話した。台湾は九州とほぼ同じ面積。家族で訪れる場合は公共交通機関ではなく、自家用車を運転していく方が旅費を安く抑えられるのだという。

地震により落石が起きた「太魯閣国家公園」の山の斜面=18日、台湾花蓮県(村松澄恵撮影)

台湾北部と花蓮を結ぶ鉄道は、地震発生の翌日には運転が再開された。しかし、道路は完全な開通には至っていない。山間部は落石によって封鎖されただけでなく、大清水隧道(ずいどう)の橋のように崩落した場所もある。今後、道路の耐震工事なども行うため、完全な開通には数年かかるという。

台湾の交通部観光署(観光庁に相当)は花蓮の観光業を支援するため6月1日から、台湾の観光客1人につき、平日1000台湾㌦(約4850円)、休日は500台湾㌦を上限に、宿泊費を補助する。冒頭のタクシー運転手の男性は「どこまでお客さんが戻るかは分からない」としつつも、補助金による効果に期待を寄せた。

地震により封鎖された「太魯閣国家公園」の遊歩道=18日、台湾花蓮県(村松澄恵撮影)
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