改革法案巡り与野党が激突 頼氏、少数与党で難しい舵取り

台湾の立法院(国会に相当)は波乱の様相を呈している。立法院本会議で17日、立法院改革関連法案の強行採決をしようとした野党議員が少数与党の民進党議員と衝突。揉(も)み合いになり、6人の立法委員が病院へ搬送された。

野党が推し進める立法院の改革関 連法案への抗議者集会 24日、台 北市の立法院前(参加者提供)

最大野党・国民党と第3政党・民衆党は立法院の監督能力を高める必要があると考え、「国会軽視罪」をはじめとした5法案を推し進めようとしている。同法案は、答弁者の反対質問や、特別な理由がない情報秘匿を禁ずることなどを盛り込み、違反した場合は2万~20万台湾ドル(約9万7000~97万円)の罰金を科す。民進党はこれによって「発言への萎縮効果が起きる可能性がある」とし、「民主主義の後退だ」と批判している。

現在、若い世代を中心に、立法院を占拠した「ひまわり学生運動」を彷彿(ほうふつ)させる大規模な抗議活動が立法院前でたびたび行われ、「台湾頑張れ」との声が上がっている。主催団体は24日の午後9時以降、10万人以上が集まり抗議したと発表。現場には秩序があり、暴動は起きなかった。

抗議活動に参加した大学4年生の林さんは「普段自分の周りで政治の話をしない人までもが今回の法案について議論している。選挙の時には中立だと思っていた民衆党には失望した」と語った。

1月の総統選と同時に投開票された立法委員選挙の結果、過半数の議席を得た政党はなかった。若者の票を集めることに成功し、8議席を獲得した民衆党が議会でキャスチングボートを握ることになった。同党は有権者から、是々非々で法案を通すなど2大政党間の争いに一石を投じる役割を期待されていたが、防衛予算の削減や、民進党が出した国防関連の法案を潰(つぶ)すなど、国民党に同調している。

長年台湾の人々のアイデンティティーを調査している政治大学選挙センターの最新の調査によると、61・7%が自身を「台湾人」だとしている。また、台湾社会では軍事力などを通して「統一」の圧力をかける横暴な中国に対する反感が強く、親中のレッテルを貼られた場合はその候補者は選挙で不利になりやすい。

約2年後の2026年は地方選挙の年だ。今回の法案採決で、国民党と民衆党が台湾の人々に「台湾民主主義の敵」だと捉えられた場合、選挙で苦戦する可能性が高い。

国民党と民衆党が法案成立を急ぐ背景には、民進党政権が長期化し、中国が民進党に接近しつつあることによって、存在意義が失われることに危機感を抱いている可能性がある。国民党の一団が2月、中国の台湾政策を担う「国務院台湾事務弁公室(国台弁)」を訪れた。その際に国台弁の宋濤主任は、条件付きではあったものの「(中国は)緑陣営(民進党を指す)も歓迎する」と話し、与党の民進党とも交流したい意志を明らかにした。

今まで民進党政権を「台湾独立勢力」と見なし、隙あらば攻撃しようとしていた中国だけに、宋氏の発言は台湾社会に衝撃を与えた。特に、中国に近いと自負していた国民党からすれば、見捨てられた気持ちが強かったのではないか。今回、中国に有利な法案を通すことで、再度中国からの期待を取り戻そうとしているとの見方が有力だ。

頼氏は20日の就任演説で、民主主義社会の基本は人々の利益で、台湾全体の利益は「政党の利益に優先される」と発言。台湾を着実に良くするためにも、「政党同士の競争ではなく、信念に基づいて協力しよう」と野党2党に呼び掛けた。

新総統就任後の23、24日、中国は「台湾独立勢力への懲罰と外部勢力への警告」と称して、台湾を囲む大規模な軍事演習を行った。今後の中台関係は、中国当局の意にそぐわない台湾の民進党政権と交流を持ちながら、もう一方で揺さぶりを掛け続ける形になると予想される。

頼氏の新政権は始まったばかり。就任式に参加した人は「台湾人を幸せに導いてほしい」と話すなど、新政権への期待は大きい。中国からの圧力が増す中、頼氏は少数与党で思うような議会運営ができない内憂外患の難しい舵(かじ)取りを余儀なくされる。

(台北・村松澄恵)

(おわり)

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