常態化する金門島周辺巡視 再び漁船転覆「禁止水域」で神経戦

無効化狙う中国当局 台湾最大野党政府対応批判  立法院ねじれ付け入る隙に

14日、台湾の金門島周辺海域で沈没した 中国漁船の乗組員を捜索する中台双方の 当局者(台湾海巡署提供)

5月20日に行われる台湾与党・民進党の頼清徳副総統の総統就任式まで2カ月を切った。対中関係が最大の難題で中国の習近平指導部との腹の探り合いが続く。台湾が実効支配する離島・金門島沖合では双方の公船が出くわせば不測の事態になりかねない緊迫した状況で神経戦の様相を呈している。(南海十三郎)

きっかけは、2月14日、金門島の沖合で台湾海洋当局の追跡から逃れようとした中国漁船が転覆して2人が死亡、生き残った2人が取り調べ後に中国に送還された拿捕(だほ)だ。中国当局は事故を機に、中国海警局が金門海域でのパトロールを常態化。公船の進入などを繰り返し、台湾当局が島の周りに設定した「禁止水域(干潮時の外延4㌔以内)」「制限水域(干潮時の外延4~6㌔海域)」の無効化を図り、一方的な現状変更を試み始めた。

中国当局は「粗暴で悪質な事件だ」と強く非難し、「『禁止水域』や『制限水域』はそもそも存在しない」と台湾の管轄権すら否定する談話を発表。2月19日、中国海警局は6隻以上の船を出して金門島周辺海域をパトロールし、同海域を航行していた台湾の観光船「初日号」(乗組員11人・乗客23人)に強制的に臨検を行い、台湾人観光客を震え上がらせた。

台湾は台湾沿岸で中国漁船が違法な漁獲、土砂盗掘、密輸が頻発していることを防止するため、1992年合意で中国の船が許可なく進入を禁止する「禁止水域」や「制限水域」を設定し、中国側も黙認してきた。

しかし、中国側が「台湾独立分子」と見る頼清徳政権が5月20日に発足するのを前に中国漁船拿捕による死亡事故で習近平政権の態度が硬化。領海の一方的変更は尖閣諸島(沖縄県石垣市)に2012年以降、中国海警局の船が領海侵入を繰り返し、常態化させた手法と酷似している。中国当局は、領海だけでなく領空についても2月から台湾海峡の民間航路を中間線寄りに一方的に変更している。

中国海警局は2月下旬、公船によるパトロールや演習を行い、海警船は2月末にも禁止・制限水域に入った。台湾海巡署(海上保安庁に相当)によると、3月15日、海警船4隻は島まで最短3カイリ(約5・5㌔)に接近(図参照)。16日午前にも、海警船4隻が禁止・制限水域に進入、台湾の海巡署が退去を呼び掛けたが、1時間余りにわたり、同水域内を航行して退去した。

今月14日、金門島南方海域で中国漁船が座礁、転覆し、6人の乗組員が海に落ち、2人が死亡、2人が行方不明となった。この際は中台双方の当局船が共同で捜索・救助活動を進めたため、中台関係の緊張増大を招くような事態には発展していない。

中国の習近平国家主席は6日、「独立反対の勢力を強化し、祖国の平和統一プロセスを共同で推進しよう」と台湾野党へも共闘を呼び掛けた。親中融和路線の台湾最大野党・国民党は、金門島の事故について政府の対応を「台湾海巡署が拿捕時のビデオを公表しようとしない」(国民党の羅智強立法委員)と批判し、海巡署を統括する海洋委員会の管碧玲主任委員(閣僚)の辞任を求めている。

台湾与党・民進党は立法院(国会に相当、113議席)では少数与党で国民党(52議席)、民進党(51議席)、民衆党(8議席)、無所属(2議席)の順。最大野党・国民党と第2野党・民衆党が結束すれば与党の法案は通過できず、ねじれ現象が政権の不安定さを印象付け、中国側は領海、領空でも脆弱(ぜいじゃく)さを突いてくることになる。

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