【連載】台湾次期政権 展望と課題(下)内政・議会運営 少数与党で多難な前途

台 湾 立 法 委 員 選 で 議 席 を 伸 ば し た 第 3 勢 力 ・ 民 衆 党 の 柯 文 哲 氏 の 選 挙 集 会 = 12 日 、 台 北 市 内 ( 村 松 澄 恵 撮 影 )

日本の若い女性の間でも人気の台湾スイーツ「豆花(ドウファ)」。台北市内の市場の一角にある行列が絶えない老舗店の店主は「材料費が上がって値上げしようかどうか迷っている」と困り顔でつぶやいた。目の前にいた馴染(なじ)み客らしき中年女性が「他の店もみんな値上げしているのだから、上げたらいいのよ」と返しつつも、どこか残念そうだった。

台湾次期政権 展望と課題(中)外交・経済安全保障 日米との連携に活路見出す

台湾では外食文化が根付いており、毎日外食する人も珍しくない。台湾人にとって、新型コロナウイルス禍以降の物価上昇の波は家計に大きなダメージを与えている。

台湾経済はコロナ禍でも成長を続けていたこともあり、全体的には好調だ。しかし、投資家や実業家でない一般市民はそれを実感できていないという。

「給料が伸びているのは半導体といったハイテク企業だけだ。一般庶民の生活は苦しくなっている」。台湾社会で経済格差が広がっていると話すのは、中年男性の汪さんだ。過去の総統選では与党・民進党の候補に投票したが、今回は最大野党・国民党の候補を支持したという。民進党政権の約8年間の執政に対して、「中国との関係を悪化させて、中国人団体観光客を来なくしてしまった」と語る。コロナ禍の厳しい政策も影響したとし、それらが飲食店や観光を生業にしていた多くの人々を廃業に追い込んだと批判した。

 台湾の行政院主計総処の調査によると、所得格差を示す代表的な指標「ジニ係数」は、2017年の0・337から22年は0・342に上昇した。ジニ係数は、0~1の間の数値で示され、格差が大きいほど1に近づく。民進党の蔡英文政権が16年に始まったため、確かに民進党政権下で経済格差が広がったといえる。

 今回の総統選で、民進党の頼清徳副総統が当選したことで、同党が3期連続で政権を担うことになった。頼氏は、台湾が1996年に民主化して以降、同一政党による政権が8年続くと政権交代が起きるというジンクスを破り、初めて民主的に副総統から総統となるといった台湾史に残る偉業を打ち立てた。

 だが、前途は多難だ。頼氏は当選確定直後の会見で、「同時に行われた立法委員(国会議員に相当、全113議席)選で過半数の議席を獲得できなかった。私たちの努力が足りなかった。謙虚に受け止め検討する」とし、「台湾を安定させ、人々が良い生活を送れるようにする」と述べた。外交、防衛、内政といったそれぞれの難題を前に、その笑顔は決して晴れやかではなかった。

立法委員選において、民進党は11議席減の51議席という結果に終わった。また、5議席から8議席に伸ばした第3勢力・民衆党にキャスチングボートを握られる形になった。

同党党首の柯文哲・前台北市長は「固定でどちらかの政党と協力関係を結ぶことはない。議題や道理にかなっているかどうかで決める」としている。既に4年後の総統選に出馬する意向を示しており、そこで当選するためにも議会で民衆党の存在感を誇示する必要がある。そのため、法案に対しては民進、国民両党と是々非々で協力関係を結ぶとみられている。

次期政権は5月20日に発足する。議会で多数派を維持していた蔡政権とは異なり、頼次期政権は思うように法案が通らない可能性が高い。また、選挙期間中には中国による数々の情報工作が行われた。議会の「ねじれ」によって生じる政党間の不和を中国が見逃すはずがなく、世論誘導を狙った工作活動は激しさを増すと予想される。難しい政権運営を迫られる4年間となるだろう。

(村松澄恵)

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