関税措置で揺さぶる中国 経済安全保障 総統・立法委員選 対中最前線 台湾の選択(2)

「地政学的に産業の優位性を拡大し、サプライチェーン(供給網)を強くして発展していく」。与党・民進党総統候補の頼清徳副総統は9日の記者会見で経済発展ビジョンを語った。世界的に強靭(きょうじん)なサプライチェーンを構築し、半導体、人工知能(AI)、軍事、監視・セキュリティー、通信の産業に重点を置く方針だ。

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頼氏は、蔡英文総統が掲げた「新南向政策」を引き継ぎ、日米や東南アジアの経済関係を重視する。中国への経済依存を減らしながら、両岸経済貿易リスクに対する警戒を強める。

台 湾 の 半 導 体 業 界 を 牽 引 す る 台 湾 積 体 電 路 製 造 ( T S M C ) 本 社 = 台 湾 ・ 新 竹 市 ( 村 松 澄 恵 撮 影 )

これに対し、最大野党・国民党の侯友宜候補は昨年12月27日、台北市内で開いた経済団体主催の会合に出席し、事実上の自由貿易協定「両岸経済協力枠組み協定(ECFA)」の問題を解決し、「直ちに両岸の対話と交流を再開する」と述べた。第3政党・民衆党の柯文哲候補は、中台の担当部局による交渉過程を可視化させ、貿易について討論すべきだと主張するなど、国民党に近いスタンスだ。

ECFAは、2010年、中国との関係強化を推し進めた国民党の馬英九総統の下、締結された。先行措置として中国側では農産品や機械、プラスチック製品など539品目の関税が段階的に撤廃された。中国の発表によると、22年末までのECFAによる免税総額は、中国の約1兆2000億円に対し、台湾は約1400億円。台湾に利益が圧倒的に大きい。

こうした中、中国政府は台湾から輸入している化学製品など12品目の関税の優遇措置を1日付で停止した。台湾が得意とする製造業に関わる部分が多く、経済へのダメージは避けられない。総統選を前に、露骨な揺さぶりを掛けている。

一方、台湾もこれまで、2500種以上の中国産品の輸入を禁じている。これに中国は「ECFAに反する」と発表、不公平な貿易となっていないか調査を行うという対抗措置に出た。調査は投開票日の前日を期限に定めており、結果次第で台湾への関税優遇の停止を検討するとみられる。

台湾が発表した統計によれば、台湾の輸出総額に占める中国(香港含む)向けの割合は4割前後の高水準で推移しているが、ECFA関連は22年の対中輸出総額(約27兆円)のうち1割強しかない。

一方、台湾経済を牽引(けんいん)する半導体などハイテク製品の多くは従来、関税優遇の対象品目でないため、同分野への影響は限られる見通しだ。蔡英文総統は1日の演説で、半導体などの台湾ハイテク産業は世界の民主主義国のサプライチェーンを牽引する不可欠な存在であり、「世界に認められ、世界を引き付けることができるようになった」と誇った。

日本が輸入する半導体の約半分は台湾製で、その中心は日本では製造ができない台湾積体電路製造(TSMC)製の高性能半導体だ。台湾からの半導体輸入がストップすると、自動車部品やパソコン、携帯電話、医療用機器などの製造に大きな障害が出る。もし台湾有事が起きれば、日米をはじめ全世界に大きな経済的打撃を与えることになる。米国務省は中国が台湾を封鎖した場合、推計2兆5000億㌦(約360兆円)の経済損失が生じるとの調査結果を発表した。

平成国際大学の浅野和生教授は、「“小国”が生き残る道として半導体に続くバイオテクノロジーなどの先端技術などを強化するのが賢明だ」と指摘。中国の経済的脅しについては、「約100万人の台湾人が中国大陸でビジネスをする中で、大陸のやり方を生で見ており、その情勢が台湾にリアルに伝わる」と話す。中国の強硬的なやり方は、台湾企業の中国進出のトーンを下げることになり、自らの首を絞めることになりかねない。(台北・豊田 剛)

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