来年1月13日投開票の台湾総統選、立法委員(国会議員)選まで2カ月を切り、24日までに各党の正副総統候補が正式に出そろう。総統選では与党・民進党候補が野党3候補よりもリードを保っていたが、最大野党・国民党と第2野党・民衆党は統一候補を18日までに調整して形勢逆転を狙う。立法委員選は与党が苦戦し、野党が盛り返して与野党が伯仲しており、政権交代の可能性が出てきた。(南海十三郎)
選挙戦は終盤の佳境に入る。総統選では親米親日路線を継承する与党・民進党の頼清徳・副総統がリードを保持。中国との融和路線を唱える最大野党・国民党の侯友宜・新北市長、曖昧な対中政策や内政路線で国民党との違いを見せる第3政党「民衆党(台湾民衆党)」の柯文哲・党主席、無所属で親中派ながら中国政府から警戒されている鴻海(ホンハイ)精密工業創業者の郭台銘氏の4氏が立候補を正式準備中だった。
ところが、15日、国民党と民衆党は台北市内で第2回の共闘会談を行い、総統選での候補者一本化で合意。両党の合意では、統一候補の決定は7~17日の複数の世論調査で行い、統一候補になれなかった側は副総統候補となる。
侯、柯両氏の支持率はほぼ互角だが、最近は侯氏がやや上回る傾向に変わりつつある。合意の会談前、国民党の朱立倫党主席、馬英九元総統が侯氏と共に立ち会い、民衆党は柯氏のみで力関係は歴然としている。
2回目の会談後、侯氏は「結果がどうであれ、台湾の平和のために一致協力する」と歓迎。柯氏は「二極対立、勝者総取りによる抑圧が強い台湾政界の混乱に終止符を打つことだ」と苦渋の選択をにじませる。海外メディアに「国民党の腹の内は総統選勝利でなく、民衆党の吸収合併」「大政党が小政党に結婚を強制している」とも語っており、「両党が戦利品を分け合っている状態」(民進党)、「柯氏は国民党の家臣になり下がった」(時代力量)と酷評している。両党とも共闘するイメージを加速させて8年ごとの政権交代に期待感を持たせ、無党派層を抱き込み、立法委員選でも共闘して議席増を目指す。
与党・民進党は今月に入り、柯文哲氏が台北市長選に出馬する際に参謀を務めた政治評論家の姚立明氏を迎え入れ、若年世代の選挙戦略を強化して支持基盤を拡大。だが、野党統一候補が現実となれば形勢は一気に不利となる。
台湾ニュースサイト「美麗島電子報」(11月10、13、14日調査)の最新世論調査によると、主要3候補の支持率はトップが頼清徳候補で33・8%、侯友宜候補は29・9%、柯文哲候補は19・9%の順だ。オンラインメディア「ETtoday新聞雲」(11月7日調査)によると、頼清徳候補がトップで34・9%、侯友宜候補は27・3%、柯文哲候補は26・0%となっている。ネットメディア「鏡新聞」(10月29、30日調査)では、頼候補が30・8%、侯候補が20・7%、柯候補が26・1%。
立法委員選(113議席=民進党61、国民党37、民衆党5、時代力量3、無所属6、欠員1)では、小選挙区(73議席)、比例代表・海外華僑枠(34議席)、原住民(6議席)のいずれも、国民党が民進党と互角の戦いをしており、国民党の議席増、躍進が強まれば与党・民進党の過半数割れになりかねない戦況だ。
「ETtoday新聞雲」の最新世論調査結果(11月7日)によると、小選挙区で国民党33・2%、民進党31・6%、民衆党14・0%,無所属3・5%、時代力量1・6%、台灣基進党0・9%の順。比例代表・海外華僑枠では国民党31・8%、民進党30・3%、民衆党15・2%,時代力量2・9%、台湾基進1・8%の順で、いずれも国民党がやや優勢で推移している。
総統選では対中政策、立法委員選では内政の実績評価が問われやすく、無党派中間層は「総統選が与党投票なら立法委員選は野党(その逆もあり)」というバランス感覚が強く働き、岩盤支持層以外の浮動票が大きく左右される。国民党に反発して民衆党を応援してきた支持層の一部が他党に流れる可能性もあり、選挙終盤での与野党の票読みは政権交代か、現状維持かで最後まで揺れそうだ。