中国、SNSで台湾世論誘導 TikTokで「認知戦」 総統選に影響か

短編動画投稿アプリ「Tik TоK(ティックトック)」の ロ ゴ マ ー ク=2022年2月9 日、ロンドン(AFP時事

情報漏洩(ろうえい)の懸念から、世界各国で利用が禁止・制限されている中国資本の短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」。台湾では若年層を中心に約533万人が利用している。中国が台湾に対して情報戦を展開する道具となっているとの指摘もあり、来年1月に行われる総統選挙への影響が懸念されている。(村松澄恵)

「台湾軍の演習は総統が逃げ出すためのリハーサルだ」「台湾人と中国人は遺伝子が似ているため、米国は台湾で生物兵器を開発している」

これらの偽情報は、中国IT大手の字節跳動(バイトダンス)が運営するティックトックなどで広まった。台湾では偽・誤情報によって影響を受けた人々で世論を形成し、社会を変えようとする中国の「認知戦」が大きな問題となっている。

日本でティックトックといえば、ダンス動画などの印象が強いが、台湾では政治的な投稿内容も目立つ。うその多くは偽・誤情報と分からないようにネット上に出回っている。警戒していない状態ではもっともらしく聞こえることもある。

情報漏洩の懸念も深刻だ。中国企業は会社法と中国共産党規約によって、共産党員が3人以上いる組織は中国共産党委員会(党委)を設置する。この機関は会社の運営にも関与する。また、当局への協力を義務付けた「国家情報法」などの法律で、中国企業は利用者情報の提供を求められれば対応するほかない立場にある。そのため、中国企業が運営するティックトックに登録した個人情報は、顔や体形といった生物学的な情報と共に中国当局に渡っている可能性がある。

これを受けて、台湾はじめ、多くの国と地域で公用端末でのティックトックの利用禁止の動きが強まっている。全面禁止とする国もあるが、ティックトックは依然、民間で人気のあるアプリとなっている。

世界各国のSNS利用状況を調べているシンガポールの調査会社ケピオスが2月に公表したデータによると、今年初頭までに、台湾では18歳以上のティックトック利用者が約533万人いるという。台湾人口が約2300万であることを考えると、4分の1近い人が利用している計算になる。

台湾当局側はティックトック利用の危険性を呼び掛けているが、効果は限定的だ。中国発の偽情報を分析し、民間防衛講習などを行っている沈伯洋(しんはくよう)台北大副教授は「政治的傾向が定まっていない人は統計上、ティックトックを使用しているかどうかで、中国の捉え方に大きく差がある」と指摘。ティックトック利用者は利用していない人に比べて、中国に対し好意的になる傾向にあると解説した。

来年1月13日の台湾総統選で無党派層が中国に好意的な候補者を選ぶように仕向けることができれば、中国は戦わずして台湾を統一できる可能性も出てくる。それだけに、ティックトックなどによる認知戦は極めて深刻な問題だ。

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