「台湾を守れなくなった日米同盟」―エルドリッヂ研究所代表 ロバート・D・エルドリッヂ氏

ロバート・D・エルドリッヂ 1968年、米国生まれ、90年、JETプログラムで英語教師として来日。99年、神戸大学大学院で政治学博士号(公共政策)。大阪大学准教授、ハワイ米海兵隊政治顧問、在沖海兵隊基地政務外交部次長を経て現職。グローバルリスクミティゲイション財団北東アジア担当理事、日本戦略研究フォーラム上席研究員、日本・台湾桜里帰りの会理事。著書に『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会)、『尖閣問題の起源』(同)、『中国の脅威に向けた新日米同盟』(青林堂)など多数ある。

台湾を国家承認せよ

世界日報の読者でつくる世日クラブ(近藤譲良会長)の定期講演会が4月29日、動画サイト「ユーチューブ」の配信を通じて行われ、元在沖海兵隊基地政務外交部次長でエルドリッヂ研究所代表のロバート・D・エルドリッヂ氏が「台湾を守れなくなった日米同盟」と題して講演。「台湾を守るには日米など世界各国が台湾を国家承認することが重要だ」と強調した。以下は講演要旨。

ロシアによるウクライナ侵攻が長期化しているという一点だけでロシアが行き詰まっていると考えるのは間違いだ。ロシアのプーチン大統領の目的や計画が分からないため、第三者には判断できない。また、戦争が長引いていることで中国が台湾侵攻を断念すると考えるのは大きな誤解だ。むしろ積極的に情報収集して台湾侵攻を成功させるための作戦を立てている。ロシアが戦術核兵器を使用するかという議論も中国は参考にしている。こうした面から中国が最も得をしていると言える。世界がウクライナに注目している間に、中国が北東アジアでやりたい放題するのではないか懸念される。

ウクライナと台湾の大きな違いは、地理的条件と国際条件で見ることができる。ウクライナは8カ国(トルコを含む)に囲まれているが、そのうち6カ国が支援しており、難民が国外に避難できる。一方で、台湾は孤島であるため、外国からの支援が困難で、有事には中国に包囲されてしまう。

国際条件はより大きな問題だ。現在、台湾を国家として認めている国は世界で13カ国しかない。世界の安全保障上、台湾を守ることが重要であるため、台湾を独立国家として日米など世界各国が承認することが重要になる。承認国家が現在の10倍の130カ国に拡大すれば台湾を守ることができる。

太平洋地域に展開する米軍と自衛隊を合わせても中国軍と比べると少ない。本来ならば日米同盟で中国に簡単に対応できたが、中国の軍拡の速度や近代化・民主化について誤った見方をしてきた。それを見直したのは、トランプ政権が誕生してからのことだ。

台湾を守るためには日米同盟を深化させることが重要になる。その歴史を振り返ってみると、日本政府が47年、米政府に提案して成立したもので、米国に押し付けられたものではない。安全保障は相互的なものでなければならない。78年に日米防衛協力指針(ガイドライン)が作られ、初めて日米合同訓練ができるようになった。日米同盟ができて最初の30年間は、結婚していても別居しているに等しいものだった。

今は台湾有事に特化した新しいガイドラインが必要だ。中国が台湾侵攻の意思決定をしないよう、早い時期に踏み切ることが必要だ。これができれば中国に対する大きな抑止力になる。

日米同盟にはメリットとデメリットがある。大きなメリットは、78年間戦争に巻き込まれていないということ。一方、デメリットは米国に対する依存度が極めて高く、現状では日本が米国に対して何も言えないことだ。米国に安全保障を任せている結果、国防意識が低くなってしまった。さらに、政治家はメディアを意識して行動している現実がある。

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