トップ国際台湾【連載】VS中国 台湾の勝算―李喜明・元台湾参謀総長に聞く(下) 中国民衆を味方に付けよ

【連載】VS中国 台湾の勝算―李喜明・元台湾参謀総長に聞く(下) 中国民衆を味方に付けよ

「ゼロコロナ」政策に抗議する中国の人々=2022年11月、北京(EPA時事)

VS中国 台湾の勝算―李喜明・元台湾参謀総長に聞く(上) 「非対称戦」防衛の要

VS中国 台湾の勝算―李喜明・元台湾参謀総長に聞く(中) 日本の対応が戦局を左右

――ウクライナ戦争をきっかけに台湾では自主防衛の意識が高まり、民間で防衛講習を行う「黒熊学院」などが注目を集めている。一方で、中国を刺激するなという声も根強い。

私個人は、台湾のような小国が防衛を強化しても、中国の安全保障の懸念となることはないと考える。

「黒熊学院」の活動は台湾の人々に危機意識を持たせ、民間の力を集めるという意味では有用だ。しかし、防衛という点では必須の武器や装備、訓練などがないため作戦能力がない。

だからこそ、私は政府主導の「国土防衛部隊」の創設を提唱している。政府管理下で訓練を行い組織された部隊は、台湾の防衛力を高め、実際の戦場でも戦力となれる。

――台湾の一部には、有事に備えることは若者を戦場に送ることと同じだという主張もある。

戦争が起こるかどうかの最大の要因は、民主主義陣営がどれだけ準備したかではなく、独裁国家の指導者が決めることだ。台湾にとってそれは中国の習近平国家主席となる。

台湾が直面する問題の一つは、極端な平和主義者たちが、有事の準備をしなければ、中国を刺激せず、武力侵攻もないと考えていることだ。

台湾が投降し、一国二制度を受け入れ、統一されるのを支持するならばそれでもいいが、嫌ならば武力衝突とならざるを得ない。

――中国に武力侵攻に踏み切らせないために、軍事面以外でできることは。

2020年に新型コロナウイルスが流行した時、中国国内はパニック状態に陥った。日本は支援物資の箱に「山川異域 風月同天(場所は違っても同じ自然を共有している)」という漢詩の一節を記して送り、中国人を感動させた。

このような交流は戦争を未然に防ぐ強力な手段だ。もし台湾もいち早く中国に医療品を提供していたら、台湾に対する中国人の頑(かたく)なな心をどれほど溶かすことができていたか。

「ゼロコロナ」政策に反対する中国人が白紙を掲げて抗議した昨年の「白紙運動」によって中国政府の政策が一変したことからも分かるように、中国共産党は国民を恐れている。中国の民意を味方に付けることも重要だ。

共産党員でない大多数の中国人と友好的に接し、支持と友誼(ゆうぎ)を得て、中国共産党政権が行うことに疑念を持ってもらう。それと同時に、われわれは静かに戦力強化を進め、中国人民解放軍が武力で台湾統一はできないと思わせないといけない。

――日米台や中国国民の意志に関係なく、独裁国家の中国は指導部の一存で動くのではないか。

私は、台湾有事が起こる要因は、主に四つあると考えている。①台湾軍と解放軍の能力差②日米の軍事的抑止力の低下③中国の夢「中華民族の偉大なる復興」の暴走④習氏個人の野心――だ。習氏はすでに異例の共産党総書記3期目を務めており、有事の可能性は高いと誰もが考えている。

私の個人的な分析では、習氏の優先順位は、第一に自分の地位を守ること、第二に共産党政権を維持すること、第三に中国の夢を実現することだ。第四にやっと米軍を西太平洋地域から追い出すことが入る。

以上のことを考えると、中国が台湾武力統一を行動に移させないようにすればよいと考える。よって、中国が台湾に侵攻しても統一できる保証がないという日米台の抑止力が重要になる。(聞き手=村松澄恵)

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