【連載】VS中国 台湾の勝算―李喜明・元台湾参謀総長に聞く(中) 日本の対応が戦局を左右

岸田文雄首相(左)とバイデン米大統領=昨年5月、東京・元赤坂の迎賓館(EPA時事)

台湾の勝算―李喜明・元台湾参謀総長に聞く(上) 「非対称戦」防衛の要

――台湾有事が起きた場合、米国はどの程度介入すると考えているか。

米国がどこまで介入するかはさまざまな意見がある。私個人としては、米国と台湾は有事における指揮系統などが明確でないため、肩を並べて戦うのは非常に難しいと考える。

よって、台湾の防衛能力が重要になる。米国は台湾を支援するだろうが、中東やベトナム戦争のような直接的な介入は行わず、ウクライナのような形で情報、武器などの支援を行うのではないか。

――日本に期待することは。

米中競争に直面する中で、他国が取り得る戦略は主に三つある。①どちらにつくかで戦局を変えるプレーヤーになる②関わらない③パートナー的役割――だ。

日本が他国と異なるのは、地理的な位置関係と軍事力上、一番目の立ち位置を取ることができる点だ。日本が躊躇(ちゅうちょ)なく米国側であると表明すれば、日米安保条約の効果もあって、中国の行動に大きな影響を与える。

逆に日本が中立的な立場を取った場合、中国はより強気に出るため、間接的に台湾への武力行使を支持することにつながる。

中国が台湾を手に入れると、日本の生命線ともいえるシーレーンが中国の影響を受ける。日本の国益を考えると、中台統一は平和的か武力かにかかわらず望ましくないだろう。

――日米台はどのように協力するのが最良か。

一番良いのは平時から日米台共同で訓練を行い、連携できる体制を構築することだ。しかし、日米と中国間の緊張を高めることになるので難しいだろう。

なので、日米台で特別なグループを作り、明確に戦時でどの領域、時間、電磁、宇宙などを誰が守るのか決定してはどうか。

私が参謀総長時代に提唱した「全体防衛構想」は、台湾は作戦範囲を短・中距離エリアに集中し、長距離エリアは日米に任せるべきだとしている。限りある財源は優先順位の高いものから使うべきだ。また、平時から日米と訓練をしていない台湾が長距離作戦を行うと、日米の足を引っ張る結果になる恐れがある。

――台湾とウクライナに違いはあるか。

ウクライナは陸続きの隣国ポーランドや欧州連合(EU)などから継続的に武器や装備の提供を受けることができる。

台湾は島国なので、有事になった場合、海上・航空作戦が危険なため、国際的な支援を受けるのは難しい。中国人民解放軍も他国からの支援を妨害する方法を考えているはずだ。

台湾は必要な戦略物資や武器を十分に備蓄していくことが非常に重要で抑止力にもつながる。

――米国などがウクライナに直接兵力を送らない理由の一つにロシアの核使用リスクが挙げられる。

中国が台湾を武力攻撃する場合、通常兵力で台湾を上回っているので、実際には核兵器を使用することはないだろう。

核兵器の使用は、その破壊力と殺傷力から人類が疲弊し、焼け野原となるだけだ。逆に使用した国が害を被ることになる。現在のウクライナにおいても、ロシアは核兵器を使用していない。

しかし、核兵器による脅迫は十分に作用するので、中国がロシアのように核兵器で日米を脅すことが予想される。合理的に考えると米軍の全面的介入を期待すべきでない。だからこそ、台湾自身の防衛力による抑止力が重要となる。

(聞き手=村松澄恵)

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