【連載】VS中国 台湾の勝算―李喜明・元台湾参謀総長に聞く(上) 「非対称戦」防衛の要

機動性高い小型兵器が中核に 従来の戦い方では限界

台湾南部・嘉義基地で行われた台湾軍の 演習=1月6日(EPA時事)
軍事大国化する中国が武力侵攻に踏み切った場合、戦力で劣る台湾に「勝算」はあるのか。ウクライナのような「非対称戦」を中核にした「全体防衛構想」を提唱し、台湾の蔡英文政権に大きな影響を与えた李喜明・元参謀総長が、世界日報のオンラインインタビューに応じた。台湾が中国との戦力差を克服するための軍事戦略や日米の役割などについて聞いた。(聞き手=村松澄恵)

――全体防衛構想とはどのようなものか。

全体防衛構想は、相手の攻撃を物理的に阻止する防衛力を高め、目的を達成させないことで、相手に行動を思いとどまらせる「拒否的抑止」の理論に基づいている。実力に大きな差がある国に対抗する場合、小国側が唯一取れる手段が非対称戦だ。

戦車には戦車、戦闘機には戦闘機で対応するといった従来の方法では経済力が中国に比べて劣る台湾では限界がある。だからこそ、今までとは異なる考え方をしないといけない。

ここで重要になるのが、低コストで数を多く揃(そろ)えられ、使用が安易で、秘匿性が高く、正確で、機動性のある小型の兵器だ。小型の兵器を使用し、戦場において敵方の戦力の優勢を相殺、有利な条件をつくることを目指す。

ウクライナが携行型ミサイル「ジャベリン」でロシアの戦車を攻撃したのは、非常に典型的な非対称戦の事例だ。

全体防衛構想での「勝利」の定義は、敵に台湾を占領させないことだ。従来の目を引く大きな戦闘車両などは、初期の段階では力を発揮するが、的になりやすく、破壊されやすい。

例えば、固定のレーダーなどはまず狙われ、戦闘開始数時間後には破壊されるだろう。戦闘機であれば滑走路が破壊されれば使用できない。従来の戦い方では目的を達成することができないため、大型艦艇などの装備は最小限にすべきだ。

 李喜明(り・きめい) 1955年生まれ。台湾海軍の潜水艦艦長、海軍司令、国防部(防衛省に相当)軍政副部長を歴任。2017~19年に制服組トップの参謀総長を務めた。参謀総長在任中、中国との戦力差を克服するための「全体防衛構想」を提唱。昨年9月に小国が大国に対抗する独自の非対称戦理論をまとめた「台湾の勝算」を出版し注目を集めた。

――なぜ全体防衛構想を提唱したのか。

20年ほど前は、従来の方法で台湾を防衛することができた。ところが、ここ数十年で中国の経済が急速に発展したことで、中国の軍事力も増強した。

現在、台湾が直面している国防上の懸念は大きく五つある。①中国人民解放軍機が毎日のように台湾周辺空域を飛行し「グレーゾーン事態」となっている②武力での台湾統一の可能性③台湾と中国の実力差④解放軍が台湾全面侵攻能力を獲得するといわれる2027年まで時間がない⑤台湾人の間に危機感がまだ醸成されていない――などだ。

政府と一般市民の間に認識差があり、これが台湾有事への準備に大きな影響を及ぼしている。

これらの理由から、従来と同じような準備を続けていては、中国に対抗することは不可能と考え、全体防衛構想を提唱した。

――全体防衛構想の中で「国土防衛部隊」の設立を提唱している。

台湾の予備役は約200万人いるが、毎年訓練できるのは11万人程度だ。そのため、予備役の訓練度に大きな不安がある。従って、志願制による「国土防衛部隊」の創設を提唱した。

同部隊は正規軍と協力しながら戦術的なゲリラ戦を行う。戦車や大砲といった従来の武器は使わず、擲弾(てきだん)発射器やドローンなど小型で軽い武器を持たせ、装甲部隊とは異なった機動性の高い小隊を編成する。

仮に解放軍が台湾の海空軍を突破し、台湾に上陸した場合、わが国の正規の装甲部隊だけでなく、多くの国土防衛部隊に対峙(たいじ)しなければならない。解放軍の死者数は大幅に増え、作戦効率は深刻な影響を受けることになるだろう。

いつどこから来るか分からない攻撃に対応するため、解放軍の計画は複雑化せざるを得ない。克服できないほど複雑であれば、侵略行為を躊躇(ちゅうちょ)するだろう。

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