【連載】台湾海峡は今 有事は起こるか〈12〉台湾安保協会副理事長・李明峻氏に聞く

26~27年が最も危険な時期

り・めいしゅん 1963年、台湾・台南生まれ。京都大学法学博士課程修了。岡山大学法学部助教授、台湾の国立政治大学国際関係研究センター助研究員を経て、現在は台湾安保協会副理事長や新台湾国策シンクタンク主任研究員、中華民国相撲協会理事長などを務める。

――中国による台湾侵攻の可能性は。

中国の習近平国家主席は3期目に入ったばかりで、当面は経済など国内問題に集中しなければならない。このため、今後2~3年は台湾侵攻の可能性が低下した。だが、2027年に4期目入りを果たすには相応の理由が必要になる。それは台湾統一だ。

中国も28年以降は少子化問題などで侵攻する余力がなくなっていく。従って、習氏が4期目に入る前の26~27年が一番危ない時期になるだろう。

――来年行われる台湾総統選も中国のシナリオに影響を与えるか。

もちろんそうだ。米国も大統領選を来年に控え、混乱している。日本と韓国の政権も支持率が低い。米日韓とも強いリーダーがいない状態だ。

これに加え、台湾で国民党政権が誕生すれば、中国にとって大きなチャンスになる。民進党は昨年の統一地方選で大敗しており、総統選で勝つとは限らない。

――国民党政権の方が侵攻リスクが高まるということか。

民進党政権は中国の侵攻に必ず抵抗するため、中国にとっては困難度が高くなる。だが、親中国の国民党政権は戦う意欲が乏しく、すぐに降伏してしまう可能性がある。

米国が介入するには、少なくとも2~3週間は持ちこたえる必要がある。だが、台湾政府が短時間で降伏したら、米国も介入できない。この場合、中国は全面戦争をせずに台湾を統一することができる。

――具体的な侵攻のシナリオは。

中国は台湾を領土の一部と主張しており、台湾との戦争は内戦という位置付けだ。内戦とは領土・領海の範囲内で行う戦争のことだ。台湾海峡は各国の船が航行する国際海峡であるため、ここで紛争が起きれば米国も介入できる国際戦争となる。

だが、台湾という島だけで起こる戦争であれば、国際社会は手出しできない。従って、中国は領土・領海を越えない戦争を試みる可能性が高い。つまり、兵士数千人を民間機で送り込み、総統府や行政院を占拠して台湾政府全体を機能停止に追い込んで降伏させる、いわゆる「斬首作戦」だ。

この時、台湾政府が戦う意欲が薄い親中国政権であれば、抵抗しない可能性が高い。米国も国際社会も何もできない。中国はこれを狙っている。

――台湾防衛の課題は。

私は台湾の軍事力は強いと思っている。兵器を独自で製造でき、米国からも多く購入している。米国や中国などと比べると弱いが、それでも世界から見れば、中型の軍事大国だ。

台湾で最も欠けているのは戦う意欲だ。蒋介石から李登輝元総統の時代までは自力で台湾を守る考えがあった。だが、2000年代以降はその意識が薄れ、米国頼み、他力本願になってしまった。最近、兵役が4カ月から1年に延長されることになったが、それまではどんどん短くなっていた。もし何かあった場合は、海外移住を考えている人も多い。

従って、問題は台湾自身だ。ウクライナは大統領を先頭にロシアの侵攻に徹底抗戦した。世界はそれを見て尊敬し支援した。だが、台湾では昨年の統一地方選で親中国の国民党が大勝した。台湾は二つに割れており、半数の人は中国を敵と見ていないというメッセージを国際社会に送ってしまった。これは台湾にとって不利なことだ。

(聞き手=早川俊行、村松澄恵)

=終わり=

台湾海峡は今 有事は起こるか〈1〉 澎湖諸島からの報告 (上)

台湾海峡は今 有事は起こるか〈2〉澎湖諸島からの報告(下)

台湾海峡は今 有事は起こるか〈3〉着上陸侵攻の現実味

台湾海峡は今 有事は起こるか〈4〉港湾権益買い漁る中国

台湾海峡は今 有事は起こるか〈5〉広がる「民間防衛」

台湾海峡は今 有事は起こるか〈6〉巧妙な中国の「認知戦」

台湾海峡は今 有事は起こるか〈7〉「生命線」の半導体産業

台湾海峡は今 有事は起こるか〈8〉ウクライナの教訓

台湾海峡は今 有事は起こるか〈9〉早まる侵攻予想

台湾海峡は今 有事は起こるか〈10〉台湾国防安全研究院副研究員 王尊彦氏に聞く(上)

台湾海峡は今 有事は起こるか〈11〉台湾国防安全研究院副研究員・王尊彦氏に聞く(下)

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