台湾 統一地方選まで10日 厳しい与党民進党

身近な争点 侮れぬ国民党基盤

台湾統一地方選に向けて行われた集会(蔡英文総統のサイトより)

投票日まで残り10日となり、いよいよ大詰めを迎えたが、大方の予想は政権野党である国民党有利とされている。現在、全部で22ある自治体(県市)のうち、与党民進党所属の首長は6、国民党所属の首長は15である(残り1つは民衆党所属の台北市長)。このうち、民進党の当選が確実視されるのは台湾南部の4つの自治体のみであり、民進党の課題はさらにいくつの勝利を積み上げられるか、というよりも「いかに惨敗を防ぐか」について取り沙汰されるほど戦況は厳しい。

現在、蔡英文総統の支持率は50%前後で推移しているにもかかわらず、これほどまでに民進党が苦境に立たされるのはなぜか。それは、台湾の将来や安全に直結する全国的な総統選挙と、有権者の生活や仕事、子育てなど身近な課題が焦点となりやすい地方選挙の違いである。

台湾のリーダーを選ぶ総統選挙では、両岸関係、日台関係、米台関係などが焦点となる。特に最も有権者の投票行動を左右するのは、これからの台湾は中国といかにつきあっていくかということだ。

国立政治大学選挙研究センターが毎年行っている調査によると、2022年6月の時点で台湾と中国の関係について、8割以上の人がまずは「現状維持を望む」と回答しており、急進的な「独立」や「統一」を望む割合はそれぞれ1割以下である。

事実、16年から政権を担う民進党も、中国と台湾はお互いに隷属しておらず、台湾と中国は現状を維持していくという姿勢を打ち出しており、これが台湾の人々の支持を得ているひとつの要因である。

他方、国民党の主張は、民進党のように中国との交流や対話を積極的に行わない姿勢が、中国による台湾への軍事的威嚇を含む脅威を呼び起こしているというものだ。国民党は、自身が政権を取れば、中国との対話を模索し、交流を拡大することで両岸の平和的な発展が維持され、経済的なメリットが高まると主張する。

しかし、香港の一国二制度がもはや形骸化した事実や、今年8月に米国のペロシ下院議長が訪台した際に中国が行った台湾周辺海域における大規模軍事演習やミサイル発射などを目撃した台湾の人々は、国民党の両岸政策について非常に懐疑的な目で見ている。つまり、台湾が中国と対話をするならば対等の立場で行われなければならず「土下座外交」をするつもりはないということだ。

統一地方選挙では、台湾の将来や安全保障よりも、その地域独自の行政課題に対する政策提言が重視される。地元のインフラ建設、産業の誘致、失業率の改善、子育て環境の整備、老人や子供に対する福祉など、いわば日々の生活に密着した問題をいかにして解決していくかが問われる。その場合、戦後70年あまり台湾において独裁政権として権力を掌握し、地方のすみずみにまで利権をはりめぐらせて来た国民党の力は未だに侮れない。仮に有権者が、台湾の将来について「自分は決して中国と一緒にはなりたくない」とは考えていても、自身の日々の生活や仕事に利益をもたらしてくれるのは民進党ではなく国民党の候補者であると捉えれば、票は国民党候補者に集まることになるのである。

とはいえ、民進党が仮に統一地方選挙で惨敗することになれば、24年の総統選挙にも微妙な影響を与えることになるだろう。民進党は伝統的に、選挙に敗れれば党主席が引責辞任することになっている。現在の主席である蔡英文総統が辞任すれば、蔡総統は24年の総統選挙候補者指名や、同時に行われる立法委員の候補者選びを党主席として主導することができず、レイムダック化する恐れもある。そうなれば、団結しているかに見える民進党に亀裂が生じ、国民党につけいる隙を与えかねない。台湾がどこへ向かっていくのか、私たち日本人もきっちり見守っていく必要がある。(H)

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