欧米から要人訪台ラッシュ 中国に一歩も引かぬ蔡総統

台湾との関係強化、各国「発展に不可欠」

3月2日、台北の与党・民進党本部で、ウクライナへの寄付を発表する台湾の再英文総統(民進党提供・時事)

台湾双十節特集

1911年の辛亥革命に由来する双十節を10日に迎えた台湾は今、ホットスポットだ。中台統一を最大の政治課題とする中国の圧力が強まる中、台湾を応援しようと米国や欧州から議員団など要人の訪台ラッシュが続く。(池永達夫)

ロシアのウクライナ侵略で、ゼレンスキー大統領は尻尾を巻いて国外逃亡を図るとのロシア側の予測に反し、地獄の崖っぷちに踏みとどまり反撃の陣頭指揮を執った。

「天は自ら助くる者を助く」との古い諺(ことわざ)通り、ゼレンスキー大統領の勇気こそがロシアの軍門に下るというウクライナの悲劇から救い出す道を歩む端緒を掴(つか)んだ。

このように一人の断固とした意思が、国家を守ることがある。

一方で、アフガニスタンではタリバンが首都カブールを陥落させる前に、ガニ大統領は海外に亡命を図り、一滴の血を流すことなく国家を丸ごとタリバンの手に渡した。

その意味では、強力な武力を背景にした軍事的圧力と外交的威圧で押してくる中国に対し、一歩も引かない強靭な意思を持った蔡英文総統がいることは台湾にとって大きな希望だ。

戦いというのは能力と意思の掛け算だ。軍装備や戦う能力はあっても、意思がなければ国を守ることはかなわない。逆に意思さえあれば、必要な能力は後からでも身に付けることが可能で何とかなることもある。

中国からの強い圧力にされされている中、台湾政府は外交面でもポジティブに動き、国際社会もそれを好意的に受け止めている。台湾支持表明のため、各国・地域の議員団などの訪台が相次ぐようになった。

わが国からは7月下旬、超党派の国会議員団団長を務めた石破茂・元防衛大臣や浜田靖一・衆議院議員(現防衛大臣)、そして長島昭久・元防衛副大臣、清水貴之・参議院総務副会長ら4人が訪台し、蔡総統とも歓談の機会を持った。

8月初旬には、米国のナンシー・ペロシ下院議長が訪台した。

それ以降、米国の議員や州知事の訪台が目白押しだ。14日には、エドワード・マーキー上院議員(民主党、マサチューセッツ州)ら米国連邦議会超党派の議員団5人が訪台したほか、26日にはテネシー州のマーシャ・ブラックバーン上院議員(共和党)が訪台し、蔡総統と会談した。また、インディアナ州のエリック・J・ホルコム知事(共和党)やアリゾナ州のダグ・デューシー知事(共和党)が相次いで訪問。

9月にはステファニー・マーフィー下院議員(民主党、フロリダ州)ら米国連邦議会超党派の議員団8人が訪台した。

また今年は、欧州からもスウェーデン(4月)やスロバキア(6月)、フランス(9月)などの議員団が相次いで訪台した。

人権問題に敏感な欧州は、新疆ウイグル自治区の人権問題で中国に制裁を課すなど対中関係が悪化する中、自由と民主主義の価値観を共にする台湾との連携が重要だと認識する国家が増えている。

ひっきりなしの西側諸国要人の訪台が続いているのは、強権国家・中国の圧力にさらされている台湾へのモラルサポートというだけではない。安倍晋三元首相の「台湾有事は日本有事であり、日米同盟の有事だ」と共通する東アジアの安全保障が脅かされている懸念と同時に、世界最先端の半導体技術と生産能力を有する台湾との関係強化が自国経済の発展にとって不可欠との基本認識があるからだ。

なお台湾政府系研究機関の中央研究院は7月、台湾の22年域内総生産(GDP)成長率が前年比3・52%になるとの予測を示した。昨年12月時点の予測から0・33ポイント下方修正した。

この経済成長率予測の下方修正に関し台湾経済部(経済産業省)の王美花部長(経産相)は、「インフレや原材料価格の上昇など国際的な状況を反映したものだが、台湾の内需は新型コロナウイルスの感染状況が落ち着くにつれ、拡大し続けている」と指摘している。

ちなみに今年は、わが国の台湾断交から半世紀の節目の年でもあるものの、日本と台湾との友好関係は100年以上の歴史がある。

先だって台湾彫刻の父・黄土水が制作した山本悌二郎のブロンズ像が、佐渡から台湾・高雄に帰郷を果たしたことがニュースにもなった。

実は4年前、日本に残されていた台湾彫刻の父・黄土水の作品が、90年ぶりに台湾に帰ってきたのを台湾中部の彰化で取材したことがある。この時、国立彰化高中図書館で黄土水高木友枝博物館開幕式が行なわれ、東京都の板寺慶子さん所有の黄土水作「高木友枝ブロンズ像」が返還されている。こうした草の根レベルの国際交流が続いているのも台湾の強みだ。

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