ウクライナ危機と台湾世論 参戦、米軍より自衛隊を信頼

日本は台湾有事に備え法整備を

3月13日、台北市で行われたロシアのウクライナ侵攻に抗議するデモ(時事)

ロシアによるウクライナ侵攻は台湾にも大きな衝撃を与えた。プーチン大統領は昨年7月に発表した論文で「ロシア人とウクライナ人は一つの民族である」と主張し、ウクライナ侵攻前の演説では「ウクライナはわれわれの歴史、文化、精神と不可分だ」と述べている。ロシアを中国に、ウクライナを台湾に置き換えれば、そのまま中国が台湾統一の正当性を強調する際の論調と全く同じだからだ。(台北・早川友久)

台湾併呑を虎視眈々(たんたん)と狙う中国と常日頃から対峙(たいじ)する台湾の人々の意識も、ロシアの暴挙を目の当たりにして変化が起きている。台湾民意基金会が3月22日に発表した最新の世論調査によると、中国が台湾に武力行使した場合に米軍が台湾防衛支援のために参戦するかという設問については、56%が「参戦しない」と回答した。「参戦する」と回答した割合は34・5%で、昨年10月の調査と比べると30・5%も減少している。一方、日本の自衛隊の参戦を信じるという回答は、米軍よりも多い43%だった。

日本への期待が米国よりも高いことに日本人としては面映(は)ゆさも感じるが、こうした結果が出た主な理由は二つ考えられる。米軍が「参戦する」と考える割合が激減したのは、昨年のアフガニスタン撤退の際にバイデン大統領が「米軍は自国を守ろうとしないアフガンのために米国兵の血を流すことはできない」と発言したことと、ロシアによるウクライナ侵攻でも米軍が出兵しないことに起因するものだろう。

一方、日本の自衛隊が参戦するだろうという回答については、台湾における日本の存在感の向上が挙げられる。昨年5月に台湾でコロナの市中感染が拡大した際、ワクチンの在庫がほとんどなかったことで台湾社会は大混乱に陥ったが、そこで真っ先に手を差し伸べたのが日本だった。ワクチンを運ぶ飛行機が桃園空港に着陸する瞬間はすべてのニュースチャンネルが生中継したが、あの光景は現在も台湾の人々の脳裏に深く刻まれている。

ただ、こうした台湾の人々の期待に対して、日本には憲法をはじめ法的な障壁が多数存在している。台湾有事の際に日本が行動を起こす上で、どのような障壁が存在するのか、一例を挙げて検証してみたい。

昨年、アフガンからの米軍撤退に伴う混乱で、日本は邦人救出のオペレーションを求められた。結果的に日本政府は邦人救出のために民間機ではなく自衛隊機を派遣した。自衛隊が海外において邦人を保護する際に根拠となるのが自衛隊法84条第3項および4項だが、そのうち第3項の2には「在外邦人等の保護措置」を行う上で「当該外国の同意があること」と定められているのである。

仮に現在、台湾有事が勃発した場合、自衛隊が台湾で邦人救出や輸送任務を行うことは法的に「不可能」である。条文には「当該外国の同意があること」という条件があるが、日本政府は法的に台湾を「国」として扱っていないからだ。日中国交樹立の際に調印された「日中共同声明」には「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」する、と記されている。

つまり、日本は台湾が中華人民共和国の一部だとは認めていないものの、台湾の帰属については「言及する立場にない」という政府見解を取っている。台湾在留邦人救出のために「相手国」の同意を得ようとしても、相手国がどこなのかというグレーな事態になっている。

こうした状況を打開する第一歩として、自衛隊法を例に挙げれば「相手国『または地域を実効的に支配する政府』の同意があること」と改正すれば、台湾有事に直接適用できることになる。「地域を実効的に支配する政府」と条文に記載しても、国際法における政府承認とは何ら関連を生じない。日本は台湾有事を自分たちのこととして捉え、一歩ずつ必要な法改正を進めていくべきである。