トップ国際韓国【NEWSクローズ・アップ】軍事協力「日本より中国と」 日韓物品役務協定に歴史“訓戒”

【NEWSクローズ・アップ】軍事協力「日本より中国と」 日韓物品役務協定に歴史“訓戒”

 韓国の李在明政権が安全保障分野を巡り「親中反日」的な姿勢をにじませている。すでに米国との間では〝不協和音〟が生じており、尹錫悦前政権時に築かれた日米韓3カ国の枠組みにひびが入れば、北東アジアにおける中国・北朝鮮の戦略を助ける結果になりかねない。(ソウル上田勇実)

6月7日、五島列島西方海域で日韓捜索・救難共同訓練を実施した海上自衛隊の護衛艦「こんごう」(右)と韓国海軍の揚陸艦「チョンジャボン」(海上自衛隊公式Xより)
6月7日、五島列島西方海域で日韓捜索・救難共同訓練を実施した海上自衛隊の護衛艦「こんごう」(右)と韓国海軍の揚陸艦「チョンジャボン」(海上自衛隊公式Xより)

 韓国国防省傘下の韓国軍事問題研究院は今春、笹川平和財団と共催で潜水艦を含む日韓海洋安保協力の重要性を訴える学術セミナーを5月にソウルで開催することで合意した。セミナーを企画した韓国側関係者によれば、「尹政権時に築いた韓日安保協力の基盤を生かし、中でも海洋安保協力が最も必要な時期と判断」し、企画したものだという。

 ところが3月末、空席だった同院院長に陸軍予備役将官で李大統領の選挙対策本部にいたある元側近が就任すると、この企画が却下された。新院長はその理由について「日本よりも、まず中国と軍事協力すべきだ」(同関係者)と語ったという。

 同企画に韓国海洋戦略研究所が同意した場合、日韓3機関による共催の可能性もあったという。セミナーの規模やテーマ、進行方法、主題発表などでも概略的に合意していたが、新院長の一言で突然ボツになり、企画した関係者は任期途中で同院を辞職した。

 この一件は、「親中反日」的な李政権の側近が現場の日韓安保協力に水を差した事例だが、最近、韓国の大手シンクタンクでは日韓協力を強調するリポートが際立って減少し、代わりに中国重視や南北和解の論調が増え始める現象も起きているという。「李政権が対外路線を親中に旋回させたいという本音におもねた」(保守系シンクタンク関係者)可能性がある。

 李大統領は今月8日、就任1年の記者会見で、日韓の物品役務相互提供協定(ACSA)締結を日本側から求められていることと関連し、次のように述べた。

 「拳骨(げんこつ)で殴(なぐ)られたという過去の記憶があるのに、治療費もなく仕事もできないのに、仲良くしよう(と言われる)。ひとまず必要だから仲良くするが、本当に協力できるのか」

 「私がいつ殴ったのか、ごめんと1回言ってあげたからもういい。3回謝ったのにまた謝らないとダメか。こんなふうでは心が通じるだろうか」

 安保協力という現実問題を前に、李氏は日本に歴史〝訓戒〟を与えたとも言えるわけだ。

 この発言について日韓関係に詳しいある大学教授は「就任以降、封印していた話をしたので驚いた。ACSAを締結しようということに対し、あのように反応する必要があったのか。平素からの本音が飛び出したにすぎないのかもしれないが、対日路線のターニングポイントになるとも受け止められる」と述べた。

 李政権内には魏聖洛・国家安保室長を中心とする親日米路線の「同盟派」が対外政策を主導してきたが、このところ鄭東泳・統一相や李鍾?・国家情報院長などを中心とする「自主派」がこれを強く牽制(けんせい)している。

 先月、韓国・安東で行われた日韓首脳会談では、「高市早苗首相は日米韓を重視したが、李大統領は韓中日を重視し、微妙な路線の違い、温度差が感じられた」(同教授)のも確かだ。

 関係者によると、韓国外交部はこのほど、日中関係の悪化を受け、政府間だけでは難しくなっている日中韓の枠組み作りを進めている。学者や民間人を交えた「1・5トラック」の枠組みを8月にも制度化しようというもので、「青瓦台(大統領府)の意向も働いている」(同関係者)という。覇権主義に突き進む中国への向き合い方で、日韓の違いが浮き彫りになりつつある。

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