今月3日に実施された韓国統一地方選挙で、保守色が濃い地域を中心に全国91カ所の投票所で投票用紙が不足する事態が発生したことを巡り、選挙管理委員会に非難が集まっている。若者を中心とした大規模抗議集会が連日行われる中、杜撰(ずさん)な事務的ミスにとどまらず、背景に政治的思惑が働いた不正選挙だとする主張も支持され、政府・与党に逆風が吹き始めている。(ソウル上田勇実、写真も)

「不正選挙 再選挙!当日投票 手作業開票!」
10日昼すぎ、ソウル市松坡区にあるオリンピック公園内のハンドボール競技場前。集まった数百人の市民が選管に抗議するスローガンを連呼していた。不正選挙の疑いがあるので再選挙を実施し、不正をしやすい期日前投票や機械判読をやめ、投票は当日のみ、開票は手作業にすべきだという意味を込めたものだ。
大田市(韓国中部)から上京してきた大学4年の男性は「韓国の一国民としてここに来るのは当然のこと。投票システムを抜本的に作り直す必要がある」と述べた。友人同士2人で来た女子大生たちは「一番訴えたいのは不正選挙だということ」「公正が踏みにじられ、憤りを感じる」などと語った。
抗議集会は「国民の投票権が侵害された」というショックに加え、開票中断を求め、投票箱の開票所移送を阻止しようとした青年が警察ともみ合いになり、一時重体に陥ったSNS上の動画にも刺激され、20代30代の若者が自然発生的に集まって始まったもの。24時間、市民が入れ替わり立ち替わりこの場でスローガンを叫び続ける不眠不休の抗議が、もう10日以上続いている。
問題は投票用紙の不足だけではなかった。事態把握が遅れ、用紙補充に何時間もかかった。一部有権者の証言によると、ソウル市長選に出馬した6人の候補者名が印刷されるべき投票用紙には、革新系与党「共に民主党」の鄭愿伍候補と保守系最大野党「国民の力」の呉世勲候補の2人の名前しかなかったという。「近年、革新系優勢のソウルで二者択一を迫れば鄭氏に有利という計算」(政党関係者)が働いたと疑われかねない。
そして何より国民を苛立(いらだ)たせたのは、問題発覚後の選管の態度だった。「当落に影響を与えない」「用紙不足ではなく、分配ミス」などと弁明したのが、国民の目には「問題の矮小(わいしょう)化」と映った。
韓国では選挙が政治に悪用された前轍(ぜんてつ)を踏まないため、選管は憲法上の独立機関となり、大統領や行政機関の介入を一切受けない。ところが、選挙の「公正さ」を保障するどころか、職員の縁故採用など腐敗の温床になってきたという指摘が少なくない。
選管は選管改革を訴える国会議員に対し、「自分たちに選挙関連犯罪に対する独自調査権があることを笠(かさ)に着て、脅迫まがいなことを言ってきた」(韓国メディア)という。
こうした高圧的な態度が是正されないまま今回の事態が起きたため、ある政治評論家は「投票用紙不足問題はたとえ意図的な不正ではなかったとしても、自業自得の面はある」と指摘する。
選挙後のある世論調査では、李在明大統領の支持率は選挙直前の59・8%から50・4%に急落した。選挙前、共に民主党の支持率は一時、国民の力の約2倍に達したが、選挙後に実施された別の調査で国民の力(44・3%)が共に民主党(38・0%)を逆転した。
問題発覚後、数日間沈黙し、当初「当落に影響がない」と発言した李氏への不信感や不満が反映されたのは明らかだ。
昨年の大統領選で李氏と一騎打ちを演じた国民の力の金文洙・元雇用労働相は本紙に「青年たちは不正を絶対に受け入れられない。今回の地方選で完全に潮目が変わり、李政権支持の世論は弱まるだろう」と述べた。






