韓国の李在明政権が憲法改正に向け本格的に動き始めた。狙いは李氏自身の再任に道を開くことにあるとも言われる。保守派は改憲の中身に社会主義的理念が刷り込まれる恐れがあるとして警戒を強めており、この動きは波紋を広げそうだ。(ソウル上田勇実)

左派系の与党「共に民主党」と野党「祖国革新党」など6政党の所属議員と国会議長(与党所属)の計187人は今月3日、改憲発議案を共同で提出した。20日以上の公告を経た後、国会で議決されれば、最後の関門である国民投票に付される見通しだ。
韓国の現憲法は1987年に改正されたもの。その後約40年間、改憲の必要性は繰り返し指摘されてきた。特に権力が一極集中する大統領制の弊害を是正するため、大統領任期を「5年1期」の再任禁止から「4年2期」の再任容認に変更する案や、議院内閣制を導入すべきだとする主張が多く見られた。
だが、今回の改憲推進には、他意があるとの見方が少なくない。李氏再任に道を開き、左派の長期執権や李氏自身が抱える各種疑惑を巡る裁判の無力化を実現させることだ。
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争点の大統領任期変更は今回の改憲案から除外され、取りあえず現職大統領の再選は禁止されたままだが、保守派は隠された意図があると警戒している。
判事出身である保守系最大野党「国民の力」の金起炫議員は8日、自身のSNSで「憲法付則を変える二段階改憲をするか、左派が掌握した憲法裁判所による偏向解釈で現職大統領の再任を許容させる小細工を使い、反憲法的親衛クーデターをする可能性が濃厚」と述べた。
自身の再任をきっぱり否定しない李氏の態度も、こうした疑いを増幅させている。国民の力の張東赫代表は、李氏主催の昼食会で「改憲を話し合う前に再任しないと国民に宣言してほしい」と求めた。李氏から明確な返答はなく、張氏は翌日、自身のSNSに「大統領を1期だけやるつもりだという簡単な一言を言えず、説明ばかりが長いのは別の下心があるということだ」と書き込んだ。
韓国メディアは改憲案の「骨子」として、大統領が戒厳令を宣布する際に国会承認を義務化することを挙げた。尹錫悦前大統領による戒厳令の衝撃が国民の脳裏からまだ消え去っていない現段階で、戒厳令制限を改憲の目玉に据えることで、国民の目をくらます可能性も否定できない。
一部の識者は、李政権が戒厳令制限など国民の同意を得やすい内容を入り口にし、徐々に盛り込みたい内容を反映させていく段階的改憲を推進するのではないかとみており、特に偏向理念が刷り込まれることを警戒している。
ある国民の力関係者は「土地の所有・処分に政府が制限を加える土地公概念や自由民主主義的基本秩序に立脚した統一から『自由』を削除するなど、社会主義理念の導入をもくろんでいる」と指摘する。
今回の改憲案では、前文に1980年に起きた光州事件の「民主化運動」が盛り込まれている。軍事独裁政権に抗して民主化を目指した国民の崇高な精神を指すものと言われるが、「当時、派出所を襲撃して銃を奪い、警察官に向け発砲したことも民主化運動の精神なのかという問題もある」(元検察幹部)。長く保守攻撃の論拠となってきた同事件を憲法前文に盛り込めば、保守派を「反憲法勢力」と位置付けることも不可能ではなくなる。
改憲案が国会で議決されるには、在籍議員295人(12日現在)のうち3分の2以上となる197人の賛成が必要だが、反対する国民の力議員107人のうち10人が離反すれば可能。改憲案には6月実施の統一地方選と同日に国民投票を実施することが盛り込まれており、仮に同時実施された場合、世論調査で約6割が改憲に賛成している現状で、過半数の支持を得るのは難しくない。「李在明権力延長のための布石」(朱晋佑・国民の力議員)は着々と打たれている。





