
「疑惑が事実にせよ事実でないにせよ、真相究明を待ちたい」
ソウル近郊の京畿道城南(ソンナム)市盆唐(プンダン)区大庄洞(テジャンドン)。周囲を山に囲まれたこの地に聳(そび)え立つ大型マンション団地に、4年前家族と一緒に引っ越してきたというある会社員の40代男性はこう述べた。
この宅地開発が事業方式などを巡る数年間の漂流を経て、本格的に動きだしたのは10年前の2015年。当時、2期目の同市市長だった李在明(イ・ジェミョン)氏が市と民間による共同開発を推進した。
ところが、初の入居が始まった21年、報道などをきっかけに不正疑惑が浮上した。開発を通じ民間企業が法外な利益を不当に手にし、その中心にはこの不正を最初から協力者と一緒に企画・指揮した李氏がいたのではないか――。いわゆる「大庄洞事件」である。
男性が言った「真相究明」を待たずに、李氏は大統領の地位まで登り詰めた。関連訴訟を審理してきた裁判所は、李氏の顔色をうかがうように相次いで裁判を延期した。
だが、先月になって驚くべき事態が起きた。関連訴訟で検察が当初求刑した追徴金約7800億ウォン(約820億円)に対し、一審判決で追徴金わずか400億ウォン(約42億円)が言い渡されたにもかかわらず、検察が突然、控訴を放棄したのだ。この控訴放棄には李氏の圧力がかかったとの見方が出ており、李氏にとってアキレス腱(けん)になる可能性が指摘されている。
ある元検察幹部はこう述べる。
「大庄洞事件の共犯者たちは控訴放棄で一審追徴金400億ウォンを除く残り7400億ウォンを懐に入れることになったが、検察が公式方針と異なる控訴放棄をするのは大統領が関連した案件以外にはあり得ない。また控訴放棄に反対する検察幹部らの行動を、大統領室が『抗命』と指摘したのは、控訴放棄は大統領の命令だったと自白したにも等しい」
李氏関連の各種世論調査で最も厳しい数字が出たのは、実は「控訴放棄を評価」の29%だったことから、控訴放棄の背後に李氏の指示があった可能性が高いことを広く国民に伝えられれば、現在50~60%ある李氏の支持率が「29%まで下落してもおかしくない」(同幹部)というわけだ。
今、保守派の間ではもう一つの数字が話題になっている。「3.5%」だ。これは今年7月訪韓した、韓国系米国人で米国務省元国際刑事司法大使のモース・タン氏が、「海の塩分が3.5%あることで、その自浄作用で海の水が腐らないのと同様に、韓国が自由民主主義を守るには国民の3.5%が集会に参加しなければならない」と述べたのが発端だ。
ハーバード大学の政治学者、エリカ・チェノウェス氏が過去の民衆革命による政権交代を研究して発見した法則「3.5%ルール」によれば、人口の3.5%が非暴力で立ち上がり、積極的、持続的に集会に参加するなら、政権転覆の可能性は80%に達するという。つまり韓国の総人口約5170万人の3.5%、180万人が「反李在明」を訴え、平和的デモに積極的、持続的に参加するなら、80%の確率で李政権が下野する――。チェノウェス氏の「政権転覆公式」にあやかろうというものだ。
もちろん180万人が集まり続けるのは困難だが、保守派は「大勢集まることが当面の目標」(市民団体幹部)だという。
保守系最大野党「国民の力」は先日、全国を巡回しながら李氏の専横を糾弾する集会を開いた。党の内紛が目立った一方で、張東赫(チャン・ドンヒョク)代表が繰り返し「体制戦争」という言葉で危機感を訴えたことに着目する報道があった。
この言葉の生みの親とも言える李熙天(イ・ヒチョン)・元韓国国家情報大学院教授は、「今、目の前で起きていることは単なる政治的葛藤ではなく、右派が守りたい自由民主主義体制と李政権が進める社会主義的国家建設との間の体制戦争だという思想戦。自分は政治的中立だという浮動層も体制危機が訪れていると悟るなら、李政権支持を躊躇(ちゅうちょ)せざるを得なくなる」と述べた。
(ソウル上田勇実)
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