
国民に根強い嫌中感情
韓国の李在明大統領が、9月3日に中国・北京の天安門広場で行われる「抗日戦争勝利80周年式典」の軍事パレードへの参加を中国政府から打診されたとされる問題を巡り、韓国では早くも参加反対の声が上がっている。仮に参加した場合、中国牽制(けんせい)で連携してきた日米韓の協力関係にひびが入るのは必至。過去に左翼歴史観を披歴したこともある李氏がどう決断するのか関心を集めそうだ。(ソウル上田勇実)
韓国大統領室は先週、李氏が中国の抗日戦勝式典に参加する問題について「韓中間で話し合いをしている」と明らかにした。報道によれば、中国政府は外交部の局長級協議や大使館ルートなどの外交チャンネルだけでなく、学者交流などの民間レベルでも参加を打診してきたという。
在韓中国大使館は韓国メディアの取材に対し、「中韓両国は肩を並べて(日本の)侵略と戦い、第2次世界大戦勝利に重要な寄与をした、その歴史に対し特別な感情と記憶を共有している」と述べたという。歴史を利用した反日隊列に韓国を誘い込もうという思惑がにじんでいる。
70周年式典では韓国から朴槿恵大統領が参加した。朴政権は保守本流とも言われ、当時、式典参加は米国から反対されたが、朴氏は北朝鮮の核問題解決に向け中国に働き掛けるという戦略的判断に基づき、自由民主主義陣営の国としては唯一、閲兵式を観覧した。
だが、今回は「親中国」と指摘されてきた李氏による参加だ。すでにトランプ米政権が李政権に対し「安保は米国、経済は中国」という米中バランサー路線に苦言を呈している中、逆に米国に傾倒しないよう揺さぶってきたともいえる。
李氏が中国戦勝行事への参加を断っていないという事実に、韓国では憂慮の声が上がっている。
保守系の最大野党「国民の力」は「2014年以降、一度も実現していない習近平主席の訪韓が先。李大統領が中国戦勝行事に参加したら韓国の国益に全面的に背く外交惨事として記録されるだろう」(報道官)と指摘。同党の韓東勲・前代表も「大多数の西側諸国の首脳が参加しないのに、韓国の新しい大統領が姿を現せば、われわれのパートナーたちはどう受け止めるだろうか」と牽制した。
李氏の行事参加は、トランプ氏が進める反中政策にも相反する。保守系大手紙・東亜日報は社説で、「在韓米軍の役割を北朝鮮の脅威を防ぐことから中国抑止に変更することが予想される米国家防衛戦略が予定通り来月発表された場合、北東アジア安保の地形は根こそぎ揺らぐ可能性が高い」と指摘した上で、「中国が軍事台頭を対外的に誇示する行事に(李氏が)行くと決めたら、不必要に中国傾倒という誤解を招くほかない」と警鐘を鳴らした。
李氏は過去の反米反日発言を封印してまで「韓米同盟」と「韓米日協力」の重要性を繰り返し強調しているが、戦勝行事参加はそうした発言に対する信憑(しんぴょう)性に疑問を抱かせ、「日米との間に亀裂を生む」(保守派論客)のは避けられない。
今年10月末から南東部の慶州で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、ホスト国の韓国が習主席に出席を要請していることもあり、李氏が戦勝行事への参加を無碍(むげ)に断りづらいという事情もある。
ただ、依然として韓国国民の間には若者を中心に嫌中感情が根強い。中国は近年、黄海上の暫定措置水域に両国漁業協定に違反する構造物を設置した上、一部を航行禁止海域に指定し、そこで新型空母を動員した演習も断行した。多くの韓国人は中国の横暴に腹を立てており、その国民感情を押し切って戦勝行事に顔を出すのは李氏としてもはばかられる。
今回の式典には70周年時と同様、ロシアのプーチン大統領も参加するとみられる。閲兵式に李氏が並べば、ウクライナ侵攻の手を緩めないロシアやそのロシアに派兵し続ける北朝鮮にも同調する格好になる。






