トップ国際韓国【連載】どこへいく韓国 中 米の同盟観は「反共」重視 李氏、背広の胸に「抗日」バッジ

【連載】どこへいく韓国 中 米の同盟観は「反共」重視 李氏、背広の胸に「抗日」バッジ

韓国の李在明大統領は「当選確実」が伝えられてから3日後の6日夜10時(日本時間同)、トランプ米大統領と初の電話会談を行った。

歴代の韓国大統領が、「当確」が出た当日か遅くともその翌日には米大統領との電話会談に臨んだのに比べると「異例の遅さ」(韓国メディア)。特に尹錫悦前大統領が、米韓関係をぎくしゃくさせた革新系の文在寅政権から交代した時は、「当確」からわずか数時間後にバイデン米大統領と電話会談を行ったのとは対照的だ。

韓国大統領が革新系から保守系に交代した時は歓迎するが、その逆なら敬遠したいという米大統領の本音が透けて見えるようだ。

大統領選で李氏と事実上の一騎打ちを演じた保守系野党「国民の力」の金文洙氏は、候補討論会で李氏にある質問を準備していた。時間切れで質問できなかったが、それは「李候補は韓米同盟を強化すると言うが、米国が考える同盟ランク付けの基準を知っているか」というものだった。

禹元植・韓国国会議長が李在明大統領に贈った太極旗バッジ(上)と実際に李氏の背広につけた場面(下)=禹氏のフェイスブックから

米韓関係に詳しいある専門家によると、最も重視する基準は「米国の戦略的価値にプラスになる同盟か否か」で、次が「理念的同質性・相応性がある同盟か否か」だという。つまり今なら、露骨な覇権主義の中国にNOを突き付け、自由民主主義の価値を共有し、米国が最も嫌う共産主義的理念を排撃できるかにある。

台湾有事などの中台関係について「中国にも台湾にも謝謝(ありがとう)」と軽率に発言した李氏は、トランプ政権の目にどう映っているだろうか。

仮に米国が李政権への不信を深めた場合、韓国にとって安保上の大きな懸念が浮上する。「戦域の変更」だ。

東アジアを含む世界の有事を念頭に米国が設定する「戦域」では、司令官が戦闘を独立的に指揮するが、今まで米国が別途に指定していた「朝鮮半島戦域」を、日本も含まれるより広範な「戦域」に編入させ、その中心が日本になる可能性があるという。そうなれば在韓米軍は将来的には在日米軍の指揮下に入ることになり、対北抑止に遅れが生じる恐れもある。一部報道では、ヘグセス米国防長官はすでにこの戦域変更に前向きな姿勢を示したという。

一方、今年、国交正常化から60年という大きな節目を迎えた日本との関係はどうなるだろうか。

李氏は9日、石破茂首相と電話会談を行い、日韓および日米韓の安保分野での協力について意見交換した。李氏が強調する実用外交を反映したとの見方も出そうだ。

しかし、これまで李氏に接してきた人たちの証言などによれば、李氏が公然と前言を翻すのは枚挙にいとまがなく、「それこそが政治」と言ってはばからない人物だ。若者を中心に人的往来を含む日韓交流がこれだけ盛んな時に、世論重視の李氏があえて「反日」を持ち出す愚は避けるとしても、李氏の本音が垣間見える出来事はすでに起きている。

李氏は就任後2日間続けて、背広の胸に左上の端がちぎれた太極旗(韓国の国旗)をかたどったバッジを着けた。これは与党所属の国会議長からもらったもので、日本統治期の独立運動で実際に使われたものだという。就任早々、わざわざ無言で「抗日」をアピールしたわけだ。

尹前大統領は安保分野でも日韓協力を推し進めたが、李氏はこの分野に敏感な世論に迎合する可能性がある。文政権は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を対日カードに使ったが、李政権では「GSOMIAがまともに機能せず、無用の長物になる」(元韓国国防研究院幹部)恐れもある。

李氏は今月中旬にカナダで開催される先進7カ国首脳会議(G7サミット)に招待され、出席する予定だ。李氏にとって外交デビューの場だが、国際社会の中国牽制(けんせい)に「米中間バランス外交」で応じるのか、早速問われることになる。

(ソウル上田勇実)

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