トップ国際韓国尹大統領逮捕、左派が狙う“支配層”交代の一幕-韓国

尹大統領逮捕、左派が狙う“支配層”交代の一幕-韓国

15日、ソウル近郊の高官犯罪捜査庁(高捜庁)に着いた韓国の尹錫悦大統領(AFP時事)
15日、ソウル近郊の高官犯罪捜査庁(高捜庁)に着いた韓国の尹錫悦大統領(AFP時事)

憲政史上初めてとなった韓国現職大統領の逮捕は、日本をはじめ国際社会にも衝撃を与えている。こうした事態に至った背景は近年の韓国社会の左傾化を抜きに語れない。

日本の統治から解放されて以降、韓国は長く南東部・慶尚道の出身者が重用される保守系の軍事独裁政権が続いた。抑圧されたと感じた一部の国民は“支配層”の交代を求めて立ち上がり、民主化運動が起こったが、それは民族の名の下で親北朝鮮の学生運動や過激な反日反米路線と結びつき、社会の各界各層に浸透していった。韓国が民主化されて40年近くたつが、一方で同じ年月を経て韓国が徐々に左傾化してきた現実にも目を向けるべきだろう。

その流れを汲み、頂点に立つのが現在の左派系最大野党・共に民主党であり、同党の李在明代表だ。

8年前、「積弊清算」を掲げ、魔女狩りでもするごとく朴槿恵大統領を弾劾・罷免に追い込んだ左派の母体は、親北学生運動の出身者たちだった。直後の大統領選で当選した文在寅氏は彼らの路線に同調する政策に終始一貫し、自身が関係する各種疑惑に捜査が及ばないよういびつな検察改革を断行した。

そして今回も李氏を先頭とする左派は、尹錫悦大統領の弾劾訴追だけでは飽き足らず、「内乱罪の首謀」の容疑で逮捕に追い込み、夫人の疑惑にまで執拗に踏み込もうとしている。尹氏がなぜ戒厳令を宣言したのかその動機は主要メディアによって搔き消され、捜査当局は先を争うように尹氏への捜査に拍車を掛けた。捜査権の有無などを巡り違法の余地が残る高位公職者犯罪処罰庁(公捜庁)が無理な逮捕に踏み切ったという批判も根強い。

8年前も今も左派共通の狙いは“支配層”の交代、すなわち保守派の壊滅と左派陣営による長期執権であり、尹氏の弾劾・逮捕はその一幕である可能性がある。

今後の焦点は、憲法裁判所による弾劾可否の判断と捜査当局による内乱罪での起訴の行方に移るが、公正な判断がなされないまま、結論ありきの政治攻勢にのみ込まれてしまう恐れもある。そうなれば魔女狩りの再現だ。

(編集委員・上田勇実)

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