【ウィーン小川敏】ロシアからの報道によると、プーチン大統領は4日、ローマ・カトリック教会の最高指導者ローマ教皇レオ14世と初の電話会談を行い、ウクライナ情勢などについて意見交換した。
バチカンニュース(独語版)は4日付で電話会談を報じたが、詳細については言及していない。レオ14世は就任以来、ウクライナ戦争をロシア軍の侵略戦争として明確に非難し、終結をロシアに要請してきた。
ロシア大統領府によると、プーチン氏はウクライナがロシア領内で民間インフラに対して破壊工作を実行したとし、「民間人に対する意図的かつ標的を絞った攻撃は、国際法上、明確にテロ行為と定義される」と非難した。
同氏はまた、トルコのイスタンブールで2日に開催されたロシア・ウクライナ直接協議について、両国が捕虜と戦死者の交換で合意に達したことや、ウクライナの子どもたちを家族と再会させるためにあらゆる可能な措置を講じていることを伝達した。
トランプ米大統領は、ウクライナ紛争の和平交渉の場としてバチカンを提案し、レオ14世もこれに賛成しているが、ロシアはこれを拒否してきた。ロシアのラブロフ外相は「ロシア正教を信仰する二つの国(ロシアとウクライナ)がカトリック教会(バチカン)の仲介で紛争を解決すべきではない」と述べている。
一方、バチカン側の報道によると、教皇は「ロシアに対し、平和を促進する行動を取るよう訴え、両当事者間の前向きな関係を構築し、紛争の解決策を見いだすための対話の重要性を強調」。また、「モスクワ正教会総主教キリル1世に言及し、就任当初のキリル1世の好意的な発言に感謝し、キリスト教の価値観を共有することが平和の探求、生命の擁護、そして真の信教の自由の探求に役立つ」と述べたという。
キリル1世はプーチン氏の戦争を全面的に支援している宗教指導者だ。ロシア側を「善」、退廃文化の欧米側を「悪」とし、ウクライナ戦争を「善の悪への戦い」と解説してきた。
キリル1世はウクライナの首都キーウを“エルサレム”と主張し、「ロシア正教会はそこから誕生したのだから、その歴史的、精神的繋(つな)がりを捨て去ることはできない」と強調。ロシアの敵対者を「悪の勢力」と呼び、ロシア兵士に闘うよう呼び掛けてきた経緯がある。