トップ国際ロシアウクライナ侵攻、終戦に向けた動き始まる 領土の一部放棄も

ウクライナ侵攻、終戦に向けた動き始まる 領土の一部放棄も

ロ シ ア の プ ー チ ン 大 統 領 = 24 日 、 モ ス ク ワ ( E P A 時 事)

トランプ米大統領は12日、ロシアのプーチン大統領と会談し、ロシアによるウクライナ侵攻の終結に向け、直ちに交渉を開始することで合意したことを明らかにした。同時に、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟や、侵略された全領土の返還には否定的な考えを示した。(繁田善成)

プーチン大統領は、トランプ大統領によるウクライナ侵攻の仲介に大きな期待を寄せていた。トランプ氏の大統領就任式が行われた1月20日(月)、通常なら金曜日に行うロシア安全保障会議をこの日に開催し、祝意を述べた上で「トランプ氏と(ウクライナ)戦争を終わらせることについて話し合う用意がある」と表明したのだ。

その中でプーチン氏は、「停戦ではなく、戦争を終わらせることだ」と指摘した上で「すべての人々の正当な利益の尊重に基づいた長期的な平和」を、トランプ大統領と話し合うと強調した。

安全保障会議をわざわざ就任式に合わせて開催し、終戦交渉について語ったのは、プーチン氏が3年前の安全保障会議で、ウクライナ侵攻開始を宣言したからだ。安全保障会議の総意として語ったことで、その“本気度”を示した形だ。

というのも、ウクライナ東部戦線でロシア軍が攻勢に出ており、有利な立場で交渉を進められる局面にあるからである。

昨年8月にウクライナ軍は、ロシアのクルスク州に越境攻撃を行い一部地域を占領した。ゼレンスキー政権は今後の停戦交渉に備え、取引材料として使える占領地を確保したい考えがあったとみられるが、その代償は大きかった。

ウクライナ軍が、東部戦線から一部の精鋭部隊を引き抜きクルスク州に差し向ける一方で、ロシアはこの“陽動”には乗らず、東部戦線の戦略的要衝であるポクロフスコエ方面に攻勢を掛けた。ウクライナ軍の防衛線は各地で崩れ、10月以降、ロシア軍は急速に占領地を拡大し、占領地はウクライナ国土の約20%に達した。

一方でロシア軍は、ウクライナ軍がクルスク州で占領した面積の約半分を取り戻した。

ポクロフスコエにはウクライナ最大の石炭企業があり、ウクライナ国内の鉄鋼産業向け石炭需要の90%以上を供給している。ポクロフスコエが陥落すれば、ウクライナの粗鋼生産は半減する、との見方もある。

各地でウクライナ軍が後退する中で、ウクライナの世論にも変化が出てきた。米ギャラップ社がウクライナで2024年8月から10月に行った世論調査では、38%が戦闘の継続を望む一方で、52%が紛争の早期終結に向けてロシアと交渉すべきと回答した。

ゼレンスキー大統領は領土に関するいかなる譲歩も拒んでいたが、2月11日付の英ガーディアン紙のインタビューで、将来の和平交渉の中で、ロシアとの領土交換に応じる可能性に言及した。

12日のプーチン、トランプ両氏の電話協議は1時間半近く続いた。トランプ氏はその後の会見で、ウクライナのNATO加盟について「現実的ではない」と語り、また、領土を全て回復できる可能性は「低い」との認識を示した。

また、プーチン氏とサウジアラビアで「そう遠くない将来に」会談することを明らかにした。

ウクライナ侵攻は、開始から3年となる24日を前に、トランプ米大統領の仲介により終戦に向け大きく動き始めた。

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