トップ国際ロシア次期大統領選へ動くプーチン氏 ロシア 中央集権に陰りも 地方に独自連帯の動き

次期大統領選へ動くプーチン氏 ロシア 中央集権に陰りも 地方に独自連帯の動き

ロシアのプーチン大統領(左)とキリル総主教 4月16日、モスクワ(ロシア正教会提供)(A FP時事)

ロシアのプーチン大統領は11月28日、モスクワで開かれた「全世界ロシア民族大会議」でオンラインで演説した。ロシア正教が主導し創設した、各界の保守派代表が集まる同会議で、次期大統領選に向け支持固めを行った形だ。しかしその一方で、ロシアの地方政府同士が連携する動きがあり、プーチン大統領による中央集権体制に陰りも見え隠れする。(繁田善成)

「全ロシア民族大会議」は創設30年を迎えた。ロシア正教会のキリル総主教が、同教会の渉外局長だった1993年に主導し創設したもので、国外を含むロシア各界の保守派代表のネットワークを構築することが創設の目的である。

文化人や知識人、政府関係者、宗教関係者など多くの保守派が集まった28日の記念会議で、最初に講演したのはキリル総主教ではなく、プーチン大統領だった。その発言要旨は、以下のようなものである。

ロシア世界とは、私たちの祖先と後孫すべての世代だ。古代ロシア、モスクワ公国、ソビエト連邦、そして現代のロシアであり、世界の強国としての主権をさらに強化しつつある。そのロシア世界が再び、世界支配とその独占を主張する者たちの行く手を阻んだ。より公正な世界秩序形成の最前線にいるのがロシアである。強いロシアがなければ、永続的で安定した世界秩序の実現は不可能である。われわれは今、ロシアだけでなく、全世界の自由のために戦っているのだ――。

プーチン大統領は、「全ロシア民族大会議」が、国家権力を支援し、それを強化していると感謝し、また、特別軍事作戦(ウクライナ侵攻)を支援するロシア正教会の貢献を高く評価した。

演説のテーマはただ一つである。ウクライナ侵攻とロシアの拡大に対し正当性を与え、ロシアの民族的・宗教的な独自性を明確化することである。それは、会議に集まった保守派の人々の琴線に触れる内容であり、次期大統領選に出馬する見込みのプーチン大統領が、彼らの支持を固めた形である。

プーチン大統領の次に演説したキリル総主教は、ロシア帝国やソビエト連邦への郷愁を語り、兄弟民族であるロシア人、ベラルーシ人、ウクライナ人のスラブ3民族が、人為的に分裂させられたことを批判した。

 野党や反政権派を徹底的に弾圧し、事実上、5選を目指すプーチン大統領に敵はいない。しかし、いくら力で反対派を抑え付けたとしても、ウクライナ侵攻で苦戦するプーチン大統領の指導力に陰りが見えていることは否定できない。それを裏付けるような動きも見え隠れする。

 ロシア南部チェチェン共和国のラムザン・カディロフ首長の息子アダム氏(15)がイスラム教の聖典コーランを燃やし勾留中の男(19)を殴ったといううわさが流れていた。これについてカディロフ首長は9月25日、「私の息子が彼を殴った。正しいことをした」と語った上で、アダム氏が男性を殴打する映像を公開した。

タタルスタン共和国議会の議員が、この映像を批判したが、その翌日には、カディロフ父子への謝罪に追い込まれた。

その逆に、アダム氏に対しさまざまな共和国から勲章が贈られ始めた。タタルスタン共和国からは、同共和国の国際的権威を向上させた貢献に対する勲章である「ダリスク勲章」が授与された。さらに、カラチャイ・チェルケス、カバルダ・バルカル両共和国から同様な勲章が相次いで贈られ、さらに、チェチェン共和国議会からも勲章が贈られた。

その後も、チェチェン英雄の称号や、ロシア特殊部隊大学から第一位学位などが贈られた。

アダム氏がこれら勲章を受け取ったこと自体は、わざわざ注目すべきことではない。そうではなく、注目すべきはロシア政治の第二階層である地方の指導者らの、中央を通さない、独自の動きが活発化していることである。

ソ連崩壊後のエリツィン時代には、地方の首長らは独自の動きを進め「小皇帝」と呼ばれるほどの権勢を誇った。これに対しプーチン大統領は中央集権化を強力に推し進め、意に沿わない地方首長を排除した。このため、地方政府同士が連携するような動きは、これまで考えられなかったのである。

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