トップ国際北米【連載】米中 せめぎ合う大国(上)友好演出も核心課題先送り、「貿易休戦」2カ月延長

【連載】米中 せめぎ合う大国(上)友好演出も核心課題先送り、「貿易休戦」2カ月延長

 24日の米中首脳会談でトランプ米大統領と習近平国家主席は終始、友好関係を演出した。両首脳は、貿易戦争の「休戦」延長や人工知能(AI)分野での対話継続で一致した。一方、関税や台湾問題など、両国間の根本的な対立に変化はなかった。今回の会談は米中関係をどこへ向かわせるのか。3回にわたって検証する。

ワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地で中国の習近平国家主席を出迎えるトランプ米大統領=23日、米メリーランド州(EPA時事)
ワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地で中国の習近平国家主席を出迎えるトランプ米大統領=23日、米メリーランド州(EPA時事)

■異例の厚遇

 トランプ氏は23日、メラニア夫人とともにワシントン近郊のアンドルーズ空軍基地まで出向き、習氏夫妻を滑走路で直接出迎えた。米大統領が外国首脳を空港で直接迎えるのは異例だ。

 翌24日のホワイトハウスでの歓迎式典には約480人の米軍要員が参加した。夜には国賓晩餐(ばんさん)会が開かれ、25日には両首脳夫妻によるお茶会や国立公文書館訪問も組まれた。

 5月に訪中したトランプ氏も、北京の人民大会堂で礼砲や儀仗(ぎじょう)隊の閲兵、国賓晩餐会など手厚い歓迎を受けており、今回の一連の演出には、その「返礼」の意味合いもある。

 しかし、華やかな外交儀礼とは対照的に、主要な懸案の一つである経済では決着を先送りした。

■「台湾」で隔たり

 米中両国は昨年から続く「貿易休戦」を2カ月延長し、2027年1月10日までとすることで合意した。これにより、高率関税の応酬が直ちに再開する事態は回避された。

 ただ、関税の最終的な扱いや中国による米農産物購入、レアアースの安定供給、先端技術を巡る規制など、対立の根幹は残った。ベセント米財務長官は、今回の延長について、関税や農産物購入など未解決の通商問題について協議を続けるための時間を確保したとの認識を示した。

 AIでは、両国が先端技術を巡る新たな対話の枠組みを設け、重大な事案が発生した際の連絡チャンネルを設置することで一致した。だが、米国による先端半導体の対中輸出規制や、AI開発を巡る両国の主導権争いに踏み込んだ新たな合意は示されなかった。

 台湾問題ではむしろ隔たりが浮き彫りになった。中国メディアなどによると、習氏は米国に対し「台湾独立に反対」する立場を示すよう要求した。米国はこれまで「台湾独立を支持しない」としてきたが、今回、トランプ政権が中国側の求める表現に政策を変更したとは発表していない。

 米議会では、民主党議員らに加え一部の共和党議員からも、停滞している台湾向け武器売却などを進めるよう政権に求める声が挙がっている。

 一方、米側が明確に一線を引いたのが、イランを巡る中国の対応だ。

 ホワイトハウスによると、両首脳はイランに核兵器を保有させないことで一致した。パーデュー駐中国米大使は25日、米CNBCに対し、トランプ氏が習氏との会談で、中国によるイランへの直接・間接の支援は「全く容認できない」と改めて伝えたと明らかにした。対象には情報提供や部品供給、軍事装備などが含まれるという。

 パーデュー氏はさらに、中国側からイランを支援していないとの説明を受け、今後も支援しないとの確約を得たとした。ただ、中国側はこうした確約を公表しておらず、実効性はなお不透明だ。

イラン支援「容認できず」

■歴史認識巡り波紋

 そのような中で波紋を広げているのが、トランプ氏の歴史認識を巡る発言だった。歓迎式典で、「共通の利益を追求する中で、われわれは第2次世界大戦では同盟国にさえなった」と強調。米義勇航空隊「フライング・タイガース」にも言及し、米中が日本と戦った歴史を現在の協力関係に重ねた。

 ただ、当時米国と共に日本と戦った中国政府は、現在の中華人民共和国ではなく、蒋介石率いる中華民国政府だった。中華人民共和国が成立したのは戦後の1949年で、中華民国政府は同年、台湾に拠点を移した。トランプ氏の発言は習氏との友好を強調する外交演出となった一方、日本では「異例の発言」として政府内でも困惑が広がった。

 トランプ氏は今回、親密外交によって米中対立を緩和させる道を選んだ。だが、首脳同士の関係に依存した安定がどこまで続くかは見通せない。

■APECとG20

 次の大きな舞台は、11月に中国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議となる。さらに12月には、米国主催の20カ国・地域首脳会議(G20)が控える。米中間選挙の終了後、今回確保した時間的猶予を貿易やAI、安全保障を巡る具体的な成果に変えられるかが、今後の焦点となる。

(ワシントン川瀬裕也)

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