米中間選挙で主要争点の一つとなるのが、移民政策だ。トランプ大統領は政権復帰後、南部国境の警備を強化し、不法移民の流入を大幅に抑え、国内での摘発や強制送還も急拡大させた。一方、これに反発する抗議運動も激しさを増し、一部では米移民税関捜査局(ICE)の施設や職員を狙った襲撃事件にまで発展している。移民問題でなお優位に立つ共和党と、強硬策の「行き過ぎ」を訴える民主党との攻防が激化している。

■共和優位に陰りも
移民政策はトランプ氏をホワイトハウスに返り咲かせた最大の争点の一つだ。2024年大統領選では、バイデン前政権下で急増した不法入国を批判し、国境管理の強化と「米史上最大規模の強制送還」を公約。第2次政権発足後、南部国境での不法越境者は急減し、共和党はこれを政権の代表的な実績として訴えている。
世論でも共和党は優位に立つ。ピュー・リサーチ・センターの7月調査では、移民政策で共和党により共感すると答えた人は41%で、民主党の36%を5ポイント上回った。犯罪対策でも共和党は43%、民主党は29%だった。ただ、移民政策での差は昨年9月の9ポイントから縮小しており、共和党にとって盤石な争点とは言い切れなくなっている。
背景には、移民取り締まりの主戦場が国境から米国内へ移ったことがある。ICEによる7月の逮捕者は約5万人と、第2次トランプ政権で最多となり、2月から約7割増えた。職場や住宅地、道路上などでの摘発も拡大している。
政権の締め付けは合法移民にも及ぶ。国務省は第2次政権下で、犯罪やビザ違反、安全保障上の懸念などを理由に17万5000件以上のビザを取り消した。さらに、亡命申請者が保有する観光・商用ビザを最大20万件取り消す計画や、移民ビザ申請者への審査強化も打ち出した。
世論調査では大都市へのICE投入について6割以上が「行き過ぎ」と回答するなど、大規模な移民取り締まりへの警戒感が広がっている。民主党は、こうした世論を追い風に、国境管理の是非そのものよりも、摘発方法や規制対象の拡大を問題視することで、中間選挙での反撃材料にしようとしている。
ただ、民主党も一枚岩ではない。8月の民主党全国委員会(DNC)の会合では、ICEの「廃止」と「改革」を求める決議がそれぞれ可決され、党内の温度差が浮き彫りとなった。党内左派勢力がICEの解体を求める一方、中道派には、法執行そのものに反対する党との印象を与えれば共和党を利するとの警戒がある。
ICE巡り民主党内に亀裂
■過激化する抗議活動
ICEを巡る対立は街頭でも激化している。昨年7月にはテキサス州アルバラドの移民収容施設が武装集団に襲撃され、警察官が首を撃たれて負傷した。今年3月、連邦陪審は参加者9人に有罪評決を出し、6月には中心人物に禁錮100年が言い渡された。昨年9月にはダラスのICE施設が狙撃され、収容者1人が死亡。現場では「反ICE」と記された弾丸が見つかった。
今年1月にはミネソタ州ミネアポリスで、連邦捜査官により米国人2人が相次いで射殺され、大規模な抗議に発展した。同州では一時、デモの最大3割で逮捕や強制排除、暴力など何らかの衝突が発生した。トランプ氏自身も事態の沈静化に乗り出し、捜査官の一部を撤収させた。
米シンクタンク、ヘリテージ財団のサイモン・ハンキンソン上級研究員は、ミネアポリスの摘発現場で、道路封鎖や捜査官への至近距離からの抗議などが行われたことを問題視する。「物理的な衝突は、相手の反応を引き出すよう意図されている」と分析し、強制力を行使する場面を映像化することで世論の同情を得ようとする狙いがあるとの見方を示している。
こうした対立は、共和、民主両党にそれぞれ難しい選択を迫っている。共和党は、国境管理の改善や反ICEの暴力事件を前面に出し、「法と秩序」を訴えることで支持を固めたい考えだ。ただ、強引な摘発や合法移民への規制拡大には反発の声も根強く、無党派層の支持離れをどこまで抑えられるかが課題となる。
一方、民主党はトランプ政権の移民政策への批判では足並みをそろえるものの、ICE廃止論と改革論で党内に溝が残る。強硬な摘発への反発を取り込みたい一方、ICE廃止論が前面に出れば、共和党から「不法移民に甘い」と攻撃されかねない。
中間選挙を2カ月後に控え、両党の世論争奪戦は一段と激しさを増している。移民問題への有権者の評価は、接戦が予想される選挙の行方を左右する大きな要因の一つとなる。
(ワシントン川瀬裕也)
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