トップ国際北米【連載】岐路に立つ米国 中間選挙の争点(1)トランプ氏 共産主義批判前面に、 民主党内で左派勢力拡大

【連載】岐路に立つ米国 中間選挙の争点(1)トランプ氏 共産主義批判前面に、 民主党内で左派勢力拡大

 11月3日の米中間選挙まで約2カ月となった。選挙戦ではイラン情勢とそれに伴う物価高、移民問題、選挙制度を巡る攻防に加え、民主党内で勢力を拡大する民主社会主義勢力(DSA)の台頭も重要な争点となっている。米国の針路を左右するテーマを検証する。

「民主社会主義者」を自称するアレクサンドリア・オカシオコルテス米下院議員(左)とバーニー・サンダース上院議員=2025年4月、西部ロサンゼルス(AFP時事)
「民主社会主義者」を自称するアレクサンドリア・オカシオコルテス米下院議員(左)とバーニー・サンダース上院議員=2025年4月、西部ロサンゼルス(AFP時事)

 DSA躍進の衝撃

 中間選挙の争点に、「共産主義」が浮上している。

 転機となったのは6月下旬に実施された民主党予備選だ。DSA系候補がニューヨーク州やコロラド州などで現職議員を破る番狂わせを演じた。その後もミネソタ州などで勝利を重ねている。

 長らく米政治の周辺にとどまる小規模勢力だったDSAは、バーニー・サンダース上院議員やアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員らの台頭を追い風に勢力を拡大してきた。今や民主党内で無視できない勢力となっている。

 DSA台頭の背景には、民主党支持層の意識変化がある。昨年のギャラップ社の調査では、社会主義に好意的な民主党支持者が66%に上り、資本主義支持の42%を上回った。

 一方、有権者全体では異なる。8月に実施された別の世論調査では、63%が「社会主義や共産主義の伸長」を懸念していると回答した。

 トランプ大統領は7月3日の演説で、共産主義を「第2次世界大戦や9・11(同時多発テロ)を含め、米国史上最大の脅威」と警告した。その後も演説やSNSで繰り返し言及し、中間選挙の主要争点へ押し上げている。

 第2次世界大戦後、中間選挙で大統領与党が下院議席を増やしたのはわずか2回にすぎない。トランプ氏の支持率も低迷している。それでも共和党は、DSA勢力の伸長や民主党の左傾化を追い風にできるとみている。マイク・ジョンソン下院議長は「民主党が共産主義者に乗っ取られつつあることこそ、共和党が勝利すると確信する理由だ」と語った。

 「赤狩り」か現実か

 これに対し、主要メディアの論調は概(おおむ)ね共通している。トランプ氏らによる共産主義批判を「赤狩り(マッカーシズム)」の再来と位置付け、DSAは共産主義ではなく「欧州型の民主社会主義に近い」(CNN)と説明する。政治的利益のために有権者の恐怖心を煽(あお)っているというのだ。

 だが、DSAにはマルクス主義との近さを示す事実も少なくない。ニュージャージー州DSAの党員調査では、「アナキスト」が約4割、「マルクス主義者」が35.7%を占めた一方、「民主社会主義者」は10.7%にとどまった。

 DSA内には「マルクス主義統一グループ」という一派も存在し、公式サイトでは「DSA内の何千人ものマルクス主義者を結集したい」と訴えている。さらにDSA幹部のデービッド・ジェンキンス氏が「われわれの目標は共産主義だ」と語る動画も確認された。

「常識」と「狂気」の選択問う

 何よりその過激さは最近改定されたDSAの綱領にも表れている。そこでは、上院廃止のほか、大統領と最高裁を議会に従属させる構想や、新憲法の制定、「民主社会主義共和国」の創設が打ち出された。保守系誌シティ・ジャーナルは、これを憲法が掲げる「抑制と均衡」を破壊するものだと批判した。

 一方、民主党内でもDSAへの見方は分かれる。穏健派の一部には警戒感が根強いものの、党主流派の一部は取り込みに動いている。次期大統領選の有力候補の一人とみられるカリフォルニア州のニューサム知事は、民主党は「大きなテントであるべきだ」と唱えた。DSA系候補は「脅威ではない」と擁護し、「包摂」の政党であるべきだと訴える。

 民主党が再び政権を握る可能性を考えれば、その行方は米国の将来にも影響を及ぼしかねない。

 有権者の間に警戒感が広がる中、共和党の重鎮ニュート・ギングリッチ元下院議長は、中間選挙を「二つの政治路線のどちらを選ぶかを問う選挙」と位置付ける。減税や経済成長を重視する共和党路線か、民主社会主義勢力の影響を強める民主党路線か。有権者にその選択を迫るには、共産主義批判だけでなく、生活に直結する政策を訴える必要があるという。

 実際、共和党のジョンソン下院議長は「二つの米国像の対決」を打ち出し、国境管理や治安、経済成長を訴える共和党と、警察・刑務所制度の廃止や不法移民への大規模恩赦を掲げるDSA路線との対比を前面に押し出している。ジョンソン氏はこれを「『常識』と『狂気』の選択」と表現した。

 一方、民主党や主要メディアは、こうしたDSA批判をトランプ政権の問題から目をそらすための政治戦術だと批判し、中間選挙を「トランプ政権への審判」と位置付ける。

 今回の中間選挙は、トランプ氏への審判なのか。それとも米国の将来像を問う選択なのか。米国の針路を占う選挙となりそうだ。(山崎洋介)

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