受容と制限の歴史 現政権、国境を強化
■移民が語る米国
「一人の米国市民として、建国の節目を心から祝いたい」――。
6月24日、米首都ワシントンで開かれた建国250年を祝う式典の会場を訪れたメキシコ出身のベロニカ・ガルシアさんは笑顔でこう語った。

約20年前に米国へ渡り、国籍を取得後、現在家族と共に暮らすガルシアさんは「人生の新たなチャンスをもらった」と移住当時を振り返る。
米国では現在、トランプ大統領が進める不法移民の摘発や強制送還を巡り、激しい議論が続いている。移民税関捜査局(ICE)の取り締まりに対する抗議活動が各地で起こり、当局者や活動家との衝突が死者を伴う事態にも発展した。
それでも、ガルシアさんは、移民出身者の立場からトランプ政権の方針を支持している。「合法移民と不法移民は、しっかり区別されるべきだ。そうすることで、私たちも胸を張って生きていける」
ガルシアさんが重視するのは、移民そのものを排除するのではなく、入国や滞在を巡るルールを明確にし、厳格に運用しようとするトランプ氏の姿勢だ。特に国境管理の徹底を支持しているという。
■受け入れへの転換点
新たな機会を求めて米国に渡り、国の一員となったガルシアさんの歩みは、特別なものではない。米国は建国以来、同様に多くの移民を受け入れ、「米国市民」として統合してきた歴史がある。
一方、誰をどのような条件で受け入れるかは、長年議論の中心となってきた。1882年の中国人排斥法では、中国人労働者の入国を原則として10年間禁止した。1924年移民法では出身国別の割当制度を導入し、北・西欧系を優遇する一方、日本を含むアジアからの移民は割り当てが与えられず、事実上排除された。
大きな転換点となったのが65年の移民国籍法だ。国別の割当制度を廃止し、家族の再統合や職業技能を重視する制度へ改めた。これにより、中南米やアジア、アフリカからの移民が増加し、現在の多民族社会の形成につながった。
レーガン政権下の86年には、移民改革管理法が成立。一定の条件を満たす長期不法滞在者を合法化する一方、不法移民を雇用する企業への罰則を導入した。移民に米国社会へ加わる道を開くと同時に、国境管理と違法雇用の取り締まりを強化する政策へと舵を切った。
■国境管理で成果
だが近年、移民制度への国民の信頼を大きく揺るがしたのが、バイデン前政権下での国境の混乱だった。バイデン氏が不法移民取り締まりの緩和などを進める中、不法越境は急増。2023(会計)年度には、南西部国境での不法移民遭遇件数が約250万件に達した。国境警備当局の対応能力が圧迫され、亡命審理の長期化や、移民を受け入れた自治体の財政負担も深刻化した。
こうした状況を「国家主権と法の支配の危機」と位置付けたトランプ氏は、昨年1月の2期目就任直後、南部国境に国家非常事態を宣言。軍を派遣し、国境の壁建設を再開するとともに、不法越境者を審理待ちの間、国内に釈放する運用の停止を進めた。
トランプ氏は、入国を希望する者が正規の手続きを踏み、政府が法律に基づいて入国の可否を判断することを、主権国家としての「コモンセンス(常識)」と位置付けている。税関国境警備局(CBP)によると、今年5月の南西部国境での不法越境者の拘束件数は、バイデン前政権期の月平均を9割以上下回っており、トランプ氏は成果として強調している。
建国250年を迎えた米国は、移民によって成長してきた国家であると同時に、法に基づいて「市民」の範囲を定めてきた国家でもある。トランプ政権が進める移民政策は、国境管理の立て直しに一定の成果を上げた。今後は、厳格な法執行を、適正手続きや経済的な必要性、合法移民の受け入れといかに両立させるかが政策評価の大きな焦点となる。
(ワシントン川瀬裕也)
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