11月の中間選挙に向けた米南部テキサス州の連邦上院選が、全米の注目を集めている。このほど行われた共和党連邦上院予備選の決選投票で、トランプ大統領が支持した保守強硬派のケン・パクストン州司法長官が、4期にわたって議席を守ってきた現職ジョン・コーニン上院議員を破ったためだ。共和党の「岩盤州」とされるテキサスでは現在、民主党候補のジェームズ・タラリコ氏が支持を広げており、本選では接戦となる可能性が指摘されている。(ワシントン川瀬裕也)
5月26日に行われた決選投票でパクストン氏は、6割超の得票率でコーニン氏を下した。コーニン氏は2002年に上院議員に初当選し、共和党上院院内幹事も務めたベテランだが、両者は3月の予備選では、いずれも過半数を獲得できず、決選投票にもつれ込んだ。最終的にトランプ氏が支持を表明したパクストン氏に軍配が上がった形だ。
約40年の政治経験と23年に及ぶ上院在職歴を持つコーニン氏の敗北は、共和党の古い指導層から、トランプ氏に近いMAGA(米国を再び偉大に)派への重心移動を象徴するものと受け止められている。
パクストン氏は、移民、選挙制度、人工妊娠中絶、LGBT政策などで強硬な保守路線を貫いてきた。州司法長官としてバイデン前政権の政策を相次いで提訴し、保守派の間で知名度を高めた。一方で、職権乱用疑惑などのスキャンダルが付きまとい、本選では無党派層や穏健保守層の取りこぼしが懸念されている。

このため、保守地盤でありながら、共和党が楽観できないとの見方も出ている。選挙分析サイト「クック・ポリティカル・リポート」は、パクストン氏勝利後、同州上院選の格付けを共和党にとって「かなり優勢」から「やや優勢」に変更した。同サイトは、テキサスの党派指数を共和党プラス6とし、依然として共和党有利の構造にあるとしつつも、パクストン氏の本選での脆弱(ぜいじゃく)性を指摘している。
一方の民主党候補は、オースティン選出の州下院議員タラリコ氏だ。神学校で学んだ経歴を持つ同氏は、自らの政策をキリスト教信仰と結び付けて語ることで注目を集めている。教育、医療、貧困対策などを「隣人愛」に根差す課題として訴え、従来は共和党に流れやすかった信仰層や穏健保守層にも浸透を図っている。
ただ、タラリコ氏の宗教的アピールや聖書解釈は、キリスト教保守派や福音派の間では「伝統的教義から逸脱している」として強い反発も招いている。最も批判を浴びているのが、21年にトランスジェンダーの生徒に関する法案に反対した際、「神はノンバイナリー(男女二元論に当てはまらない)だ」と述べた発言だ。
同氏は後に「挑発的」な表現だったと認めつつ、趣旨は「神はジェンダーを超越している」という点にあったと説明したが、共和党側はこれを「神への冒涜(ぼうとく)」とも受け取られかねない発言として攻撃している。
また、人工妊娠中絶を巡る発言も保守派の怒りを買った。タラリコ氏は、ルカによる福音書の「受胎告知」に触れ、聖母マリアが神の意思を受け入れる前に「同意」があったとの解釈を示し、「創造は同意を伴わなければならない」と主張した。保守派から見れば、こうした発言は聖書を用いて中絶容認論を信仰で正当化するものと映りやすい。
共和党側は、こうした過去の発言を利用し、タラリコ氏を「テキサスの価値観から外れた急進左派」と位置付けている。一方のタラリコ氏は、生活費高騰や医療、教育などの争点を前面に出し、共和党側の攻撃を「古い文化戦争」と批判している。
テキサスは長年、共和党の牙城とされてきた。民主党は長く苦戦しており、連邦上院選では1988年以来、知事選でも90年以来、勝利していない。それでも、急速な人口増加、都市部・郊外の変化、ラテン系有権者や高学歴層、無党派層の動向により、民主党は近年、同州での反転攻勢を模索してきた。
今年1月には、ヒューストンを中心とする連邦下院選挙区の補欠選挙で民主党候補が勝利したほか、共和党優勢とされた州上院の選挙区でも民主党が議席を奪う番狂わせがあった。こうした局地的な民主党の勢いが、州全体を対象とする上院選にどこまで波及するかが焦点となる。
共和党としては、トランプ氏を中心とするMAGA派が保守層を結束させられるか、民主党にとっては信仰を語るリベラル候補が保守州で支持をどこまで広げられるかが問われる戦いとなる。






