トランプ米大統領が2月28日に踏み切った対イラン軍事作戦は、4月下旬に入っても不安定な停戦と緊張再燃を繰り返している。イラン側によるホルムズ海峡の通航妨害で原油供給への懸念が強まり、原油価格が高騰したことで米国内ではガソリン高が家計を圧迫している。
作戦開始当初、政権内や与党・共和党内には、比較的短期間の軍事作戦で成果を挙げられるとの期待があった。実際、トランプ氏は3月初旬の記者会見などで、イランの核開発などに対し、妥協しない姿勢を明確に示し、米メディアのインタビューでも、戦争は終結に近いとの認識をたびたび示していた。
しかし、現実はその通りには進まなかった。数週間程度で主要な軍事目標を達成し、外交交渉に持ち込めるとの期待とは裏腹に、ホルムズ海峡を巡る対立が長引き、戦況は当初の想定よりも複雑化した。
トランプ氏は3月、自身のSNSで、原油高は「世界の安全と平和のための非常に小さな代償だ」と投稿し、作戦を擁護した。イランに対しては、海峡を開放しなければ重要インフラを攻撃し「石器時代に戻す」と強い言葉で圧力をかけた。
一方で、イランとの交渉の円滑さを演出する発言や、早期収束への期待感をにじませる発信も続いた。発言の振れ幅は、軍事的圧力を維持しつつ、事態収拾への道筋も示さなければならないトランプ氏の複雑な立場を映し出している。
こうした影響は世論にも表れている。3月公表のシカゴ大学の全米世論調査センター(NORC)による調査では、イランへの軍事作戦について6割近くが「行き過ぎだ」と回答した。特にガソリン代や生活費の上昇を懸念する声は強く、戦争の是非そのものに加え、日常生活への打撃が政権への不満を押し上げている。
その結果、4月上旬時点での世論調査では、支持率は4割を下回り、第2期政権発足以降最低水準となった。
ただ、トランプ氏の支持基盤が直ちに崩れているわけではない。3月下旬にテキサス州で開幕した保守系政治集会「CPAC(保守政治行動会議)」では、共和党政治家や保守活動家の多くが対イラン作戦を支持した。
第1次政権で上級顧問を務めたメルセデス・シュラップ氏は「イランを再び自由にする必要がある」と訴え、著名福音派指導者フランクリン・グラハム師も、トランプ氏の攻撃判断は「イスラエル防衛のために必要だった」と評価した。
キリスト教の伝統行事イースター(復活祭)の期間には、保守層の中核である福音派の指導者らがホワイトハウスに集まり、トランプ氏に手を当て祈りを捧(ささ)げるなど、依然として強固な支持基盤は崩れていないとみられる。
一方で、議会内では作戦の長期化に対する懸念が強まっている。4月中旬、議会承認のない対イラン軍事行動の停止を求める決議案が上院と下院で審議された。結果的に否決はされたものの、採決は接戦となり、議会内で出口戦略への不安が広がっている現状を示した。
2015年のオバマ政権によるイラン核合意を一貫して厳しく批判し、18年にはそこから離脱した経緯を持つトランプ氏にとって今回の軍事作戦は、中途半端な妥協で終わらせることができない。一方で、戦争が長引けば政権への逆風は一段と強まることになる。今年11月に中間選挙を控えるトランプ氏は難しいかじ取りを迫られている。
(ワシントン川瀬裕也)
(終わり)
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