トップ国際中東【連載】イラン戦争と変わりゆく世界(1)核放棄へ圧力強める米

【連載】イラン戦争と変わりゆく世界(1)核放棄へ圧力強める米

11日、イスラマバードで会談するバンス米副大統領(左)とパキスタンのシャリフ首相(AFP時事)
11日、イスラマバードで会談するバンス米副大統領(左)とパキスタンのシャリフ首相(AFP時事)

 米国・イスラエルとイランの軍事衝突は、海峡封鎖による原油価格の高騰を招くなど国際秩序の根幹を揺るがし、その影響は多岐にわたる。 停戦交渉の行方、米欧の亀裂、米中対立の波及、米国内政治への影響について検証する。

 2月28日に開始された米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦は4月8日、2週間の攻撃停止に入った。仲介国のパキスタンでは11日、米国とイランの停戦協議が開始されたものの、合意には至っていない。

 米・イスラエルとイランの攻撃の応酬が続く3月下旬、米国がイランに対し、仲介国のパキスタンを通じて15項目の停戦案を提示した。イスラエルの民放チャンネル12によると、停戦案には、イラン核施設の解体、核兵器開発の放棄、ウラン濃縮の停止、全濃縮ウランの国際原子力機関(IAEA)への引き渡し、代理勢力への支援停止、ホルムズ海峡の開放、ミサイル計画の制限など、要求は広範に及ぶ。

 トランプ米大統領は4月初め、イラン指導部が満足のいく交渉に応じなければ、発電施設や石油インフラへの攻撃を開始すると牽制(けんせい)した。米軍はこれまでミサイル貯蔵施設など軍事施設を標的に攻撃してきたが、エネルギー施設は攻撃対象から除外していた。トランプ氏は、イランが事実上封鎖しているホルムズ海峡を開放するよう繰り返し要求し、期限内に応じなければ民間インフラを攻撃すると通告。その期限は最終的に7日夜まで延長された。

 一方、イランは6日、米国の停戦案を拒否し、濃縮活動の容認、制裁解除、米軍の中東撤退など10項目の対案を提示。米国の主張と真っ向から対立した。

 これに対し、トランプ氏は7日朝、自身のSNSで「今夜、一つの文明がまるごと滅びるかもしれない」と警告。また、完全な政権交代が実現するとして、「世界史の最も重要な瞬間になる」と述べ、イランへの圧力を一段と強めた。

 しかし同日夜、トランプ氏はSNSで、イランがホルムズ海峡の航行を認めれば、米国とイランの間で2週間の攻撃停止が実現すると発表。イランの最高国家安全保障会議も声明で、米国との合意を認め、最終停戦合意に向けて交渉を行うと明らかにした。

 トランプ氏は翌8日、「米軍は既に全ての軍事目標を達成し、さらに上回った」と主張。イランから10項目の提案を受け取ったとし、長期的な和平合意に向けた交渉の基盤になると述べた。

 パキスタンの首都イスラマバードで11日から12日早朝にかけて行われた米国とイランの停戦協議は、丸一日に及んだが決裂した。米代表団を率いたバンス副大統領は「核兵器開発を放棄する意思が見られない」と批判。イラン側は「米国は信頼を得る努力が不足している」と反論した。

 米シンクタンク民主主義防衛財団のイラン専門家のジャナタン・サイエ氏は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、イランは攻撃停止が発表された後もペルシャ湾岸諸国への攻撃を続けていたと指摘。イランが米国の停戦ルールに従うつもりはないというシグナルを発したと分析する。イランは、自国の条件で交渉していることをイラン国民に示すために協議に臨んでいるという。

 イランは17日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエルの10日間の停戦期間中はホルムズ海峡を開放すると発表。しかし、米国によるイラン港湾の海上封鎖が続いているとして、イランは翌日には海峡を再び閉鎖すると表明した。

 イスラエルはいずれヒズボラ掃討のためレバノン攻撃を再開するとみられ、そうなればイランはさらに態度を硬化させることが予想される。米国が攻撃を弱め交渉を重ねても、イランの強硬姿勢が続く限り、核やミサイルの脅威を取り除く道筋は見えない。

(エルサレム・森田貴裕)

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