
【ワシントン川瀬裕也】米国防総省は23日、第2次トランプ政権で初となる軍事指針「国家防衛戦略(NDS)」を公表し、米軍の最優先任務を「米本土の防衛」と位置付けた。戦略は、中国への抑止をインド太平洋での最大の戦略課題とし、全同盟国に対し、防衛費を国内総生産(GDP)比5%まで引き上げるよう要求している。
文書は重点として、①本土防衛と西半球の安定確保②インド太平洋での対中抑止③同盟国の負担分担拡大④防衛産業基盤の強化―の4点を列挙。米本土防衛では、国境や海上接近経路の防護、核・サイバー抑止など、従来の防衛網の強化に加え、無人機など新たな脅威への対応や、次世代ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」の推進を掲げた。
対中戦略では「力による抑止」を基本としつつ、偶発的衝突を避けるため軍同士の意思疎通拡大を明記。インド太平洋では、九州・沖縄から、台湾、フィリピンを結び南シナ海に至る「第1列島線」に沿った「強固な防衛を構築する」指針を打ち出した。一方で、今回の戦略文書では、台湾についての言及はなかった。
同盟政策を巡っては、米国が限られた資源を本土防衛と対中抑止に集中させるため、他地域では同盟国の主体的役割を促す方針を示した。特に北朝鮮抑止においては、「韓国は、より限定的な米国の支援を受け、北朝鮮を抑止するための主要な役割を果たす能力がある」と明記し、米軍の役割分担の見直しを示唆した。
また、弾薬や装備の生産力を高めるため、防衛産業基盤の再建や規制の見直しを強調。同盟国の生産能力活用にも言及した。日本の防衛費への直接的な言及はなかったが、同盟国一律に「5%」を求めたことで、現在「2%」を目標にしている日本政府はさらなる増額や役割拡大を迫られる可能性が高い。
NDSは、政権が先に策定した「国家安全保障戦略(NSS)」を基礎に、外交・経済・安全保障を横断する国家戦略を軍事面で具体化した位置付けとなる。バイデン政権下の2022年に発表された前回のNDSと比較し、民主主義や価値観外交への言及が抑えられ、抑止力や生産力などの実務的要素を前面に出した構成となっている。






