トップ国際北米【連載】再就任1年 トランプ大統領の米国(6)価値観と実利の日米同盟へ

【連載】再就任1年 トランプ大統領の米国(6)価値観と実利の日米同盟へ

首脳会談で握手を交わすトランプ大統領(左)と高市早苗首相=2025年10月、東京・元赤坂の迎賓館(ホワイトハウス提供)

 トランプ米大統領の2期目政権発足と、日本での高市早苗政権の誕生は、日米同盟の緊密化への期待を高めた。両首脳は昨年10月、東京で開かれた日米首脳会談で、安全保障・経済両面における連携を確認し、日米関係を「新たな黄金時代」と位置付ける共同声明に署名した。

 首脳会談では、従来の政権が進めてきた「自由で開かれたインド太平洋」の推進で一致。重要鉱物およびレアアースの供給確保に関する文書に署名し、経済安全保障面でもさらなる連携強化を図ることが確認された。

 会談の中でトランプ氏は、高市政権が防衛力の抜本的強化に取り組んでいる点について「承知している」とした上で、日本は「最強レベルの同盟国」と評価した。こうした発言から、日米関係は良好な滑り出しを見せていると受け止められている。

 高市氏は会談直後の昨年11月、トランプ氏が求める「同盟国の防衛費増額」に応える形で、これまで2027年度までの目標としてきた防衛費の対GDP比2%達成を前倒しする閣議決定を実施。さらなる防衛費増も視野に、安保関連3文書も今年中に改定する意向を示している。

 こうした日本の動きについて、米国の著名な国際政治学者ウォルター・ラッセル・ミード氏は最近の論説で、日本が防衛費増額や台湾との連携強化、武器輸出規制の見直しに踏み出している点を挙げ、「日本は目覚めつつある」と評価した。

 2期目のトランプ政権は、安全保障において強い抑止力を重視しながらも、年始に実施したベネズエラでの軍事作戦のような強硬策に出る側面も併せ持つ。本紙の取材に応じた元自衛艦隊司令官(海将)の香田洋二氏は、「トランプ氏の行動は予測できない部分が大きい」とした上で、台湾有事など、危機の局面で、現場が迷わず動けるよう「日米同盟を基軸とした安保戦略を実務レベルで詰めておく必要がある」と語り、首脳間の良好な関係を前提とした防衛力強化と、きめ細かな制度整備の重要性を指摘する。

 安全保障面での連携を重視する一方で、昨今の米国は、同盟国と利害を鋭く衝突させる姿勢も見せる。日本も例外ではなく、関税や貿易赤字を交渉カードとして突き付けられた。これにより、石破茂前政権時には、赤沢亮正経済再生担当相(当時)が計10回にわたり訪米し、関税交渉を実施した。

 この点について、同じく取材に応じた南洋理工科大学(シンガポール)の古賀慶准教授は、「2期目のトランプ政権は、共通の価値観以上に、同盟国が米国に対し、どのような利益をもたらしてくれるかを重視している」と分析する。

 その上で古賀氏は、「今後、日本は実利ベースの関係をしっかりと構築していくべきだ」と指摘し、「日米同盟の戦略的価値を日本側が明確に示し、両国にとって利益になることを訴えていくことが重要だ」と提言した。

 また経済安全保障の分野でも、同盟深化に伴う課題を指摘する声がある。国際政治に詳しい慶応義塾大学の土屋大洋(もとひろ)教授も取材に応じ、日本におけるサイバーセキュリティー分野での技術向上は「必須事項」だとした上で、機密情報を日米で安全に共有する前提として、「セキュリティークリアランス制度を着実に実施していく必要がある」と主張している。

 かつて1期目トランプ政権において、故安倍晋三元首相は、トランプ氏と深い信頼関係を築き、価値観を重視する日米外交を展開してきた。2期目に入り、トランプ氏が「アメリカ・ファースト」をより強力な「ディール(取引)」の形で世界に突き付ける中、安倍氏の正当な後継者を自認する高市氏が、価値観と実利を伴う新たな日米同盟を築くことができるか、その手腕が問われている。

(ワシントン川瀬裕也)

=終わり=

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