
トランプ米大統領は昨年12月、米海軍の戦力を抜本的に強化する新たな大型戦艦建造計画「黄金艦隊(ゴールデンフリート)」構想を正式に発表した。急拡大を続ける中国、ロシアの軍事力に対する抑止力強化の意図があるとみられ、これまでの艦艇編成を大きく転換する戦略的プランとして注目が集まっている。一方、技術や資金面など、課題も指摘されている。(ワシントン川瀬裕也)
トランプ氏は昨年12月22日、フロリダ州の邸宅「マールアラーゴ」で、ピート・ヘグセス国防長官、マルコ・ルビオ国務長官、ジョン・フェラン海軍長官と共に演説を行い、海軍が新たに2隻の大型戦艦を建造すると発表した。
「トランプ級」と名付けられた新型艦は、排水量3万~4万㌧で、極超音速ミサイルやレールガン、対ドローン用の高出力レーザーなどを含む最新鋭の兵器が搭載される計画だという。トランプ氏は「これまで建造されてきた艦艇の中でも、最速、最大級で、100倍強力な戦艦になる」と豪語した。1番艦に当たる「ディファイアント」の建造は近く始まる見通しだといい、「まずは2隻から運用を開始し、最終的には20~25隻になる予定」だとしている。
米政府内では、米海軍の装備の老朽化が喫緊の課題とされており、造船能力や生産量においても、中国に後れを取っているとの危機感が強まっている。同日の演説の中でもトランプ氏は「わが国は艦艇が切実に必要だ。現在の艦は老朽化し、時代遅れになっている」と述べ、海軍力強化の必要性を強調している。
そこでトランプ氏が打ち出したのが海軍力の抜本的強化策である黄金艦隊構想だ。これまでもトランプ氏は、次世代ミサイル防衛構想を「ゴールデンドーム」と命名したり、永住権を取得することのできる新しいビザを「トランプ・ゴールドカード」と名付けたりしてきた。これらは昨年1月、トランプ氏2期目の就任演説の中で「米国の『黄金』時代が始まる」と宣言したことに由来するとみられ、いずれも肝煎り政策であることがうかがえる。
米海軍は第2次世界大戦以降、一貫して原子力空母を主軸とし、巡洋艦や駆逐艦、攻撃型原子力潜水艦などを一体として展開する「空母打撃群」を作戦運用の中核としてきた。そのため従来の巡洋艦や駆逐艦は、基本的に空母を守る「脇役」として設計されてきた。
これに対し、新型の「トランプ級戦艦」は、新型兵器や各種ミサイルの垂直発射装置などを大規模に搭載することで、空母と並ぶ新たな主軸戦力として、全く異なる運用が可能になると期待されている。
同構想の背後には、軍事力の増強を急速に推し進める中国、ロシアなどの存在がある。中露では米空母を狙い撃ちにする長距離対艦弾道ミサイル(いわゆる「空母キラー」)や極超音速兵器の開発が急ピッチで進められており、新たな脅威となりつつある。
これらの脅威に対処するため、トランプ氏は空母打撃群などの伝統的戦力を維持・強化しつつ、新型艦艇の投入により海上戦力全体の底上げを図りたい構えだ。
一方で、課題を指摘する声もある。一つは技術的観点だ。トランプ氏は、新型艦建造にかかる時間は「約2年半」と宣言したが、米シンクタンク・ハドソン研究所の上級研究員で防衛概念技術センター所長のブライアン・クラーク氏は、これに異議を唱えている。クラーク氏は軍事系ネットメディアのインタビューで、「(新型艦は)設計が始まってから完成まで少なくとも10年はかかるだろう」と述べている。
またクラーク氏は、装備面についても懸念を表明している。米海軍がレールガン開発に15年以上を費やし、最終的に2021年に断念した経緯などを振り返り、「艦艇への搭載段階に至る前に、レールガンには解決されていない技術的問題が山積している」などと指摘している。
もう一つの課題はコスト面だ。新型大型艦は建造費だけでなく、運用維持費(整備・修理・弾薬・燃料・近代化改修)まで含めたライフサイクルコストがかさむ。クラーク氏は、建造費だけでも「1隻当たり100億㌦超」になり得るとの見立てを示している。議会が長期にわたる巨額支出を継続承認するかは不透明だ。
米国防政策の方向性を左右する同構想の今後の動向が注目される。






