
米教育省は18日、業務の一部を他省庁に移管することで「教育省の解体」に向けた一歩を踏み出した。トランプ大統領は同省がこれまで教育現場に左派政策を押し付けるなど過剰な介入をしてきたとしており、「教育を州に返す」ことを目指している。(ワシントン山崎洋介)
「教育省は職員の90%を一時休暇させた。結果どうなったか。何も起きなかった。学校は開き続け、生徒は授業に出て、教師は給料を受け取った。政府閉鎖は、学校がワシントンの官僚機構に依存していないことを証明した」
史上最長の43日続いた政府閉鎖から間もない17日、教育省のマクマホン長官はビデオメッセージを公開し、こう主張。「教育を統括しているはずの機関の90%が数週間失われても支障がないなら、その存在は本当に必要なのか」と訴えた。
その翌日、マクマホン氏は、教育関連プログラムの一部を他省庁に移管し、「連邦教育官僚機構の解体」を進めると発表した。例えば、初等・中等教育局と高等教育局は労働省に移管。海外研究プログラムや、政府の国際教育・外国語関連の取り組みの監督は国務省が引き継ぐとした。
教育省は1979年、当時のカーター政権下で設立された。しかし、過剰な介入により、リベラル政策を押し付ける装置になっているとして、保守派を中心に批判が高まっていた。米国では、教育はもともと州や地方自治体の権限が強いこともあり、教育省の廃止論が保守派の間で高まっていた。
近年は民主党政権下で左派政策が推進されており、特にバイデン前政権は、連邦政府からの資金を受け取る学校にトランスジェンダー生徒による女子トイレ使用を認めることを強いる規則を決めた。また、保守系団体「教育を守る親の会」によると、同政権は「多様性・公平性・包括性(DEI)」関連のプログラム推進のため229件、10億㌦(約1570億円)以上の助成金を出していたことが明らかになっている。
それに加え、昨年度は2680億㌦と多額の予算にもかかわらず、それが生徒の学力向上に結び付いておらず、保守派は「連邦官僚機構の肥大化」と批判してきた。
こうした声を背景に、トランプ氏は昨年の大統領選の公約として、教育省が「過激派、狂信者、マルクス主義者」に浸透されているとし、同省を廃止し、教育を「州に返還」すると誓っていた。
ただ、同省は法律に基づいて設置されており、大統領だけでは廃止できず、議会の立法が必要となるが、現状では実現可能性が低いとされる。そこで、トランプ氏は3月の大統領令で、マクマホン氏に対し「法律の許す最大限の範囲で教育省を閉鎖」するよう指示した。
同氏は就任した直後の同月、教育省の大規模な人員削減を進め、4千人以上いた職員の半分を解雇もしくは希望退職で削減した。これを受けて20州と首都ワシントンの民主党の司法長官や教職員組合が提訴。法廷闘争となったが、連邦最高裁は7月、大量解雇を容認する判決を下した。
この動きに、民主党議員と共に、その支持基盤でもある教員組合は強く反発している。全米教員連盟(AFT)の会長ランディ・ワインガーテン氏は、ABCニュースに対し、トランプ政権は「唯一子供に直接関わる省庁を『なくしたい』と明言しているのだ。これは未来の放棄であり、責任の放棄だ」と批判した。
一方、リバタリアン系シンクタンク、ケイトー研究所のニール・マクラスキー氏はABCニュースに、教育省を閉鎖しようとするマクマホン氏の取り組みを称賛。「憲法は連邦政府に教育を統治する権限を与えておらず、教育省には実際に成功したという実績もない」と主張した。
教育省「閉鎖」について米世論は二分されているが、その「内容」をどう説明するかで調査結果が大きく変わることも示されている。保守系団体コーク財団による最近の調査によると、教育省の閉鎖について何ら詳細を示されずに質問された場合、51%が反対し、賛成は38%にとどまった。しかし、初等・中等教育への資金は維持され、他の省庁に統合されることなど、その詳細を提示した場合、結果は逆転し、56%が賛成、反対は30%に減少した。





