
【ワシントン山崎洋介】トランプ米政権は9日、カリフォルニア州ロサンゼルスで一部暴徒化した不法移民取り締まりへの抗議活動の対応に、海兵隊員約700人を派遣した。さらにその後、トランプ氏は州兵2000人を追加投入すると発表した。これに同州のニューサム知事は「権威主義への第一歩」などと強く反発、両者は対立している。
6日に移民税関捜査局(ICE)が実施した、不法移民の一斉摘発をきっかけに始まった抗議活動は暴力化した。燃え盛る複数の車両から立ち上る巨大な煙や、メキシコ国旗を掲げた人物の様子が伝えられている。
トランプ氏は9日、記者団に「問題を引き起こしているのはプロの扇動者たちだ。彼らは反乱者で、悪人だ。刑務所に入るべきだ」と述べ、厳しい対応を誓った。
一方、ニューサム氏はX(旧ツイッター)に投稿し、「海兵隊は民主主義の守護という貴重な役割を担うもの。政治の駒ではない」と批判。海兵隊派遣は違法で、「露骨な権力の乱用」だとした。
海兵隊の派遣に先立ちカリフォルニア州政府は9日、トランプ氏が7日に出した初回の州兵約2000人の動員命令に対して、違憲だとして提訴。州の要請なく派遣が決められたことに反発したニューサム氏は声明で、トランプ氏が州兵を掌握するため、「仕組まれた危機」をつくり出していると非難した。
トランプ氏は同日、自身のソーシャルメディアに「暴動の対処に、州兵派遣という大きな決断をした。さもなければロサンゼルスは完全に消滅していただろう」と述べ、自身の決断の正当性を訴えた。
ロサンゼルス警察のマクドネル署長も8日夜、州兵投入について聞かれ、「事態は完全に手に負えなくなっている」と述べ、必要性を認めた。マクドネル氏によると、抗議者たちは警察官に対し、コンクリートを砕いては、その破片を投げ付けている。また致死性のある商業用花火を発射し、中身の定かでない液体を投げている。同氏はこうした暴力行為に「圧倒されている」とし、「彼らの行動には限度がない」と指摘した。
こうした抗議活動を米国民は否定的に見ており、9日に実施されたユーガブの世論調査では、抗議活動に好意的な見解が36%、反対が45%、どちらとも言えないとしたのが19%だった。