
トランプ米大統領の就任100日を前にして、トランプ氏の支持率が「歴史的低水準」にあると報じられた。しかし、こうした調査には、トランプ氏支持者が過小評価されていると指摘される。昨年11月の大統領選でも、多くの世論調査がトランプ氏の圧勝を予測できなかったこともあり、その信頼性が再び問われている。(ワシントン山崎洋介)
先月27日に発表されたワシントン・ポスト紙などによる世論調査によると、トランプ氏の支持率は39%で、就任100日を迎えるこの時期の評価としてはフランクリン・ルーズベルト大統領(1933~45年在任)以来、80年ぶりの低水準を記録。不支持率は55%に上った。
全国紙USAトゥデーのコラムニスト、デイス・ポタス氏は、この結果を引き合いに出し、トランプ氏がすでに「レームダック(死に体)大統領」だと主張した。
しかし、トランプ氏はこうした調査結果に強く反発。先月29日の集会で、「偽の世論調査」だと反発。「共和党員よりも民主党員を、はるかに多く調査対象にしているからだ」と主張し、信憑(しんぴょう)性に疑問を投げ掛けた。
この発言は、共和党の世論調査員であるジョン・マクラフリン氏の分析を踏まえたものだ。同氏は、トランプ氏が昨年11月の大統領選の一般投票で50%の得票があったにもかかわらず、ワシントン・ポスト紙の世論調査には、こうした有権者が34%しか含まれていなかったと指摘。また支持が42%だったニューヨーク・タイムズ紙の世論調査もトランプ氏に投票した人を37%しか含めていなかったとした。
このことは、これらの世論調査が、実態を正確に反映していない可能性を示している。実際、トランプ氏への支持が揺らいでいないことを示唆する調査結果もあり、例えば4月14日に発表されたマサチューセッツ大学アマースト校などの世論調査によると、トランプ氏に投票した人のうち、後悔しているのはわずか2%だった。また、公共宗教研究所の調査では、トランプ氏に投票した人のうち92%が今でも満足していることが分かった。
昨年11月の大統領選では、多くの世論調査がハリス前副大統領への支持を過剰に評価していたことが明らかになった。一方で、非公開を前提とした陣営の内部調査では、一貫してハリス氏が劣勢だったとされる。
オバマ元大統領の元選挙参謀で、ハリス陣営の上級顧問だったデビッド・プラフ氏は11月下旬のインタビューで、内部世論調査においては、ハリス氏がトランプ氏をリードすることは一度もなかったと断言した。プラフ氏はハリス氏が敗北したことについて「この結果は、人々を驚かせたと思う。なぜなら、9月下旬から10月上旬にかけて発表された一般の世論調査では、われわれの内部調査では見られなかったハリス氏のリードが示されていたからだ」と述べた。
昨年の大統領選で多くの世論調査がハリス氏リードを示す中、一部世論調査は一貫してトランプ氏がリードする結果を示し、最終的な選挙結果もより正確に予測した。
このうちラスムセン・リポートの調査ディレクターを務めるマーク・ミッチェル氏は昨年11月に本紙のインタビューに応じ、世論調査会社が、ハリス氏を後押しするために意図的に同氏に勢いがあるように見せようとした可能性を指摘。こうした調査は「回答者全体がトランプ氏を嫌う人々に偏っており、米国の有権者全体を反映していない」などと問題視した。
こうしたことから、現在の世論調査結果にも「反トランプ・バイアス」がかかっている疑いが付きまとう。
トランプ氏は自身のソーシャルメディアでニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙の調査について、「選挙詐欺で捜査されるべきだ」と主張。「私が彼らの世論調査で予想されたよりもはるかに大きな勝利を収め、彼らは信頼性を失ったが、次の選挙でも不正行為と嘘(うそ)を続けようとしている」と批判のボルテージを上げた。トランプ氏の1期目で国家経済会議(NEC)委員長を務めた経済評論家のラリー・クドロー氏はコラムで「彼らは、トランプ大統領の最初の100日間が失敗であることを示すために、世論調査をでっち上げるためにできる限りのことをしている」と両紙の世論調査を非難した。
来年11月には中間選挙を控えており、こうした世論調査の信頼性を巡って今後も論争は続きそうだ。