来年7月までに戦略提言
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トランプ米大統領は1日、米国建国の理念である宗教の自由を擁護する新たな委員会の設置を発表した。宗教的価値観の軽視が指摘されたバイデン前政権に対し、トランプ政権は、宗教の自由を最優先課題の一つと位置付け、前面に打ち出している。(ワシントン山崎洋介)
「全国祈りの日」の1日、ホワイトハウスのローズガーデンの壇上では、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の指導者のほか、敬虔(けいけん)なキリスト教徒として知られるジョンソン下院議長が次々に祈りを捧(ささ)げた。その後、多様な宗派を代表する関係者に囲まれたトランプ氏は新たに「宗教の自由委員会」を設立する大統領令に署名した。
トランプ氏は演説で「米国は神の下の一つの国家」だと強調した上で、「過激な左派はそれを排除しようとしているが、そうはさせない」と訴えた。
同委員会の委員長は、テキサス州のダン・パトリック副知事が務める。同氏は、同州の公立学校に親の同意の上で祈祷(きとう)や聖書朗読の時間を確保することを認める法案を推進するなど、宗教的価値観を重視してきたことで知られる。
委員には、第1次トランプ政権で住宅都市開発長官を務めたベン・カーソン氏、ニューヨーク大司教の ティモシー・ドーラン枢機卿、人道支援団体「サマリタンズ・パース」を率いる伝道師のフランクリン・グラハム師、トランプ政権の新組織「信仰局」トップのポーラ・ホワイト牧師らが名を連ねている。
同委設立の背景の一つに、バイデン前政権下で宗教的価値観が軽視される傾向があり、これに対して保守派や宗教界の一部から不満が高まっていたことがある。バイデン氏が昨年のキリスト教の祝日「イースター復活祭」と同じ日に当たる昨年3月31日に「トランスジェンダー認知の日」を祝う声明を出し、反発を招いたことはこれを象徴する出来事だ。
またバイデン政権下では、連邦捜査局(FBI)の内部文書に、特定の「伝統的カトリック教徒」を国内テロのリスク要素として扱う動きがあったことが、内部告発によって明らかになった。
一方で、連邦最高裁が2022年に、人工妊娠中絶を憲法上の権利とした判決を覆す決定をして以降、中絶反対派の教会などに対して火炎瓶の使用や器物破壊といった暴力事件が各地で急増したが、バイデン政権下では十分な法的措置や厳正な対応がなされなかった。トランプ政権が今回発表したファクトシートによると、同委が取り組む重点分野の一つにこうした「礼拝所の保護」が挙げられている。
このほか重点項目の中には、「宗教団体の言論の自由」が含まれる。これは、教会など非課税の団体・組織が特定の選挙候補者に対して支持・不支持を表明することなどを禁止するジョンソン修正条項の撤廃を念頭に置いたものとみられる。同条項についてキリスト教保守派は、宗教指導者の言論の自由を制限していると強く批判してきた。トランプ氏は1期目で「信仰の代表者が罰せられることを恐れず自由に発言できるようにする」として、廃止を目指す意向を示していた。
さらにファクトシートは、「親が子供を宗教学校に通わせる権利を阻む」政策が信仰を実践する権利を損なっていると指摘している。これは、多くの州で宗教的指導内容を含む学校に対して、公的資金やバウチャー制度(私立学校の学費などを補助し、より自由に学校を選択できるようにする制度)の利用を認めないルールが存在していることなどを指しているとみられる。これらの政策は、宗教的価値観に基づく教育を求める親にとって、実際の学校選択の幅を狭める結果となっているとの批判がある。
こうしたことを含め、同委は信仰局に、来年7月4日までに宗教の自由を擁護し、強化するための戦略について報告し、立法、行政措置について提言する予定だ。
ホワイト牧師は祈りの日のイベントで、信仰局が新設されたことについて「歴史的な出来事」だとし、「ここ100日間でホワイトハウスに千人以上の宗教指導者が訪れた」と報告。具体的には、反ユダヤ主義や反キリスト教的な偏見を含むあらゆる宗教差別の防止や信仰に基づく団体との連携による里親制度・養子縁組の促進などに取り組んでいるとした上で、「多くの施策が進行しているが、我々の最優先事項は常に宗教の自由の擁護」だと強調した。