トップ国際北米性転換を悔いる若者たち 女性に戻ったクロエ・コールさん

性転換を悔いる若者たち 女性に戻ったクロエ・コールさん

「ドゥ・ノー・ハーム」のブース前で取材に応じたクロエ・コールさん(山崎洋介撮影)

米国では近年、性転換治療を受けた若者が後に後悔し、その被害を訴える事例が相次いでいる。その先駆けであるクロエ・コールさん(20)がこのほど本紙のインタビューに応じた。「男性」になるための治療を止め、今は「女性」として生きるコールさんは、トランプ大統領が子供への性転換治療を制限する大統領令に署名したことについて、「過激なジェンダー・イデオロギーと戦うための重要な第一歩」と評価し、今後の取り組みに期待を示した。(ワシントン山崎洋介)

「治療」で一生続く痛み 米国

「長い間、米国では『性別適合治療』の名の下に子供たちが性機能を失わされ、(体の一部が)切除される温床となってきた」。コールさんは、米国で推進されてきた子供へのジェンダー医療の現状についてこう訴えた。こうした治療は「実際には、子供たちを一生にわたる痛みの道に追いやり、生涯にわたって患者として生きることを強いるものだ」と警告した。

子供の頃、ボーイッシュなところがあり、精神衛生上の問題を抱えていたコールさんはソーシャルメディアの影響で自身が「実際には男性」であると考えるようになった。12歳の時にジェンダークリニックで治療を受け始め、15歳で乳房切除手術を受けた。

しかし、学校で母乳育児の意義について学んだことなどをきっかけに「性別移行」を後悔。17歳でデトランジション(元の性別に戻ること)を開始した。

2023年7月、当時19歳だったコールさんは連邦議会の公聴会で、「私はかつて、自分は間違った体に生まれたのだと思い込んでいた。信頼していた周りの大人たちもそれを肯定し、それが私に生涯にわたる取り返しのつかない害をもたらした」と証言。体の痛みなどの後遺症のほか、永久的な骨格や声の変化や性機能障害に苦しんでいるとし、自身を「米国史上最大の医療スキャンダルの被害者」だと訴えた。

2022年春ごろから子供への性転換治療に反対する声を上げ始めたが、トランスジェンダーの権利擁護派たちからの強い反発を受けたという。コールさんは本紙に「私が公に発言し始めれば、トランスジェンダー活動家たちから嫌がらせに直面することになると分かっていた。なぜなら、性別移行をやめた時点で、すでに嫌がらせが始まっていたからだ」と振り返った。

具体的には「自分の体験を語っただけなのに、誰かを傷つけていると非難された。証言をした後に転倒させられたり、食べ物や飲み物を投げ付けられたりしたこともある。レイプや殺害の脅迫も受けた」と語った。

しかし、むしろそのことが発言する必要性について確信を強めた。「私が声を上げることで、同じ状況にあった多くの人々が勇気を持ち、公の場で自分の体験について話すことができるようになった」とはっきりとした口調で語った。

精神的に不安定だった思春期に性転換治療を行ったことへの後悔を訴える人たちが相次いだことを受け、保守色の強い州を中心に同医療を禁止する動きが出た。現在、27州が未成年への性別適合治療を制限する法律を制定している。一方、コールさんの地元カリフォルニア州など民主党主導の州では「トランス避難所」法が成立し、性適合治療を受けるために他州から来た未成年者に対して裁判所が他州の法律を適用することを禁じている。

トランプ氏は1月28日、連邦資金を受け取る医療機関に対し、19歳未満への性転換手術を禁止する大統領令に署名した。同氏はこの中で、性転換治療について「子供の性別を変えられるとの過激で誤った主張の下、多感な子供らを傷つける不妊手術が実施されている」と非難し、思春期抑制剤の投与やホルモン療法、外科的手術などの同治療を制限した。

根拠乏しいジェンダー治療 クロエ・コールさん語る

これに対し、米自由人権協会(ACLU)などが、トランスジェンダーの若者とその家族を代表して訴訟を起こし、メリーランド州ボルティモア連邦地裁は先月13日、この大統領令の差し止めを命じた。コールさんは「これがまさに、大統領令に留(とど)まらず、連邦法が必要であることを示している」と主張した。

トランスジェンダーの権利推進派たちが、トランプ氏の大統領令に反発していることについて、コールさんは「彼らは『子供たちが害を受けている』『命が危険にさらされている』などと訴えているが、それは全くの嘘(うそ)だ。効果を裏付ける信頼性のある科学的根拠はない。実際には、この治療によって人々は傷つけられている」と訴える。

昨年発表された、未成年者の性転換治療に関して英「国民保健サービス(NHS)」の委託を受けて4年かけて行われた調査結果では、その効果を裏付ける証拠は「著しく弱い」と評価された。これまで発表された同治療に関する研究は「質が低い」と指摘するとともに、ほとんどの若者にとって「医学的な治療は性別に関連する苦痛を管理する最良の方法ではない」と結論付けている。

また先月25日に発表されたテキサス大学健康科学センターの論文では、「性別違和」と診断された18歳以上の人たちのうち、性別適合手術を受けた人たちは、受けていない人たちに比べて、うつ病、不安、自殺念慮、薬物依存症のリスクが高いことが示された。

トランプ氏は、今月上旬の連邦議会演説で、「今、私は議会に対し、子供への性転換手術を恒久的に禁止し犯罪化する法案を可決し、子供たちが『間違った体に囚(とら)われている』という嘘を永遠に終わらせることを求めている。これは大きな嘘である」と連邦法の制定を求めた。コールさんは「トランプ氏の任期である4年間のうちに、この問題を最終的に克服するチャンスがある」と期待を示す。

世論の後押しは強まっており、ピュー・リサーチ・センターが先月実施した調査によると、米国人の56%が未成年者に対する性別適合手術の禁止を支持。3年前と比べ10ポイント増加した。こうした世論の変化についてコールさんは「この問題について声を上げた被害者やその家族や親たち、またこうした医療の実態について話した勇敢な内部告発者たちのおかげだ」と力を込めた。

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