トップ国際北米トランプ米政権、「左派の牙城」法曹協会に照準  「特権」剥奪も示唆

トランプ米政権、「左派の牙城」法曹協会に照準  「特権」剥奪も示唆

今年1月、米連邦議会の指名承認公聴会で証言した司法長官のパム・ボンディ氏(山崎洋介撮影)
連邦政府からの左派思想一掃を進めるトランプ米政権は、多様性などリベラルな方針を推進する米国の代表的な法曹団体である米法曹協会(ABA)と対立を強めている。米国の法科大学院の認定権限などを持つ同団体は本来中立性が求められているが、近年、左傾化を強めており、トランプ政権は「特権剥奪」の可能性も示し是正を求めている。(ワシントン山崎洋介)

トランプ政権のパム・ボンディ司法長官は2月28日、ABAへの書簡で、ABAが長年にわたり、法学教授とその学生に「『多様性』を装った違法な人種差別と性差別」を義務付けているとして、その多様性規則を廃止するよう求めた。ABAが米国の法科大学院の唯一の認定者であることは「特権であり、義務的な多様性の目標はその特権の乱用であり、取り消される可能性がある」とも警告した。

ABAは法科大学院の学術基準を設定し、法曹界のための倫理規範を作成するほか、法科大学院を評価・認定する権限を持つ。大多数の州では、学生はABA認定の法科大学院を卒業していないと、司法試験を受けることができないことから、法曹界に絶大な影響力を持つ機関だ。

このため本来であれば、中立性が求められる立場だが、ABAは近年、この認定権限を利用して、左派的な方針を推進してきたと共和党や保守派から非難されている。

中でも特に問題視されているのが、法科大学院に少数派の権利を強調するリベラルなプログラム「多様性、公平性、包括性(DEI)」の採用を義務付けてきたことだ。これは、法曹界で「少数派となっているグループの学生に対して十分な機会を提供し、性別、人種、民族に関して多様な教員および職員を配置する」ことを求めている。

ABAは、トランプ氏が1月にDEIを使用する大学への資金提供を拒否した大統領令に署名したことを受け、この規定を一時的に停止した。しかし、ボンディ氏は、この規定がすでに、大学の入学選考において人種を考慮することを違憲とした2023年6月の連邦最高裁判決に違反していると主張し、「即時かつ完全に」廃止するよう要求した。

ABAは、DEIのほか、LGBTの権利や中絶へのアクセス支援を推進するなど「左派の牙城」とも言われる。今月4日に声明を発表し、トランプ政権が政府に不利な判決をした裁判官を批判したことなどを挙げ、政権が裁判所と法曹界を弱体化させようとしていると非難。また、トランプ政権が米国際開発局(USAID)の資金を削減したことに対して訴訟も提起している。米メディアによると、ABA自体もUSAIDから数百万㌦の資金提供を受けていたことが分かっている。

エリック・シュミット上院議員をはじめとする共和党の6人の上院議員は、ABAに宛てた3月7日の書簡で、「ABAは急進的な左翼の擁護団体である」と指摘。同団体は、大統領が指名した裁判所判事への評価を行う役割も担っているが、「候補者を公平に評価し、勧告を行うことができない失敗した機関」として、トランプ政権に対しABAを判事指名プロセスから完全に排除するよう求めるとした。

ABAは近年、保守的な判事候補に「不適格」のレッテルを貼る傾向が強く、トランプ氏が1期目に連邦最高裁判事に指名した3人の保守系判事のうち2人を不適格と評価していた。

米国では、ABAだけでなく、大学などの教育機関、一部非営利団体の左傾化が指摘される。「特権」剥奪の可能性にも言及するボンディ氏や共和党議員らの強硬な方針は、トランプ政権が掲げる「コモンセンス(常識)革命」の一環とも言え、今後の展開が注目される。

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