トップ国際北米トランプ氏、殺戮の停止優先 米ウ 対露停戦へ交渉に意欲 【ウクライナ侵攻4年目 識者に聞く  元米大統領副補佐官 フレッド・フライツ氏に聞く 】

トランプ氏、殺戮の停止優先 米ウ 対露停戦へ交渉に意欲 【ウクライナ侵攻4年目 識者に聞く  元米大統領副補佐官 フレッド・フライツ氏に聞く 】

トランプ米大統領(写真左)とウクライナのゼレンスキー大統領(写真右)=2025年2月28日、ワシントンDC(UPI)
2月28日に米ホワイトハウスで行われたトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の首脳会談は決裂したが、その後、双方がロシアとの停戦に向けた交渉に意欲を示すなど、協議再開への動きが出ている。第1次トランプ政権で大統領副補佐官を務め、現在は同政権高官らが設立した「米国第一政策研究所」で外交安全保障問題を担当するフレッド・フライツ氏に今後の見通しについて聞いた。(聞き手=ワシントン山崎洋介)

――ゼレンスキー氏は鉱物取引に署名する意向を表明した。

これは良い兆候だ。これがトランプ氏や米高官とウクライナ政府との集中的な協議の始まりとなり、最終的には米国がロシアとウクライナの高官と同じ部屋で協議することを期待する。

元米大統領副補佐官 フレッド・フライツ氏
 Fred Fleitz 米中央情報局(CIA)、国防情報局(DIA)、国務省、下院情報特別委員会などで計25年間勤務。第1次トランプ政権で大統領副補佐官・国家安全保障会議(NSC)首席補佐官を務めた。現在、米国第一政策研究所・米国安全保障センター副所長。

――ゼレンスキー氏はトランプ政権にロシアによる再侵攻を防ぐための安全保障の確約を求めている。トランプ政権はこの要望にどう対応するか。

トランプ氏の優先事項は殺戮(さつりく)を止めるための停戦だ。安全保障の面では、米国は欧州が提供することを期待している。私の見方では、その中身がどのようなものであろうと、トランプ政権は後の交渉で解決したい問題だと考えている。

――トランプ政権高官らは鉱物協定によって米国がウクライナに権益を持つことが、安全保障につながると示唆している。

現状では、鉱物協定はウクライナ政府による米政府への象徴的なメッセージとしての意味合いが強い。トランプ氏が強く望むこの協定についてゼレンスキー氏が譲歩し、合意することは、トランプ氏との交渉における誠意を表すことだ。

この合意がロシアによる再侵攻を防ぐ防壁として機能するかについては、先の話になる。

――トランプ氏はロシアに対して融和的すぎるという批判を受けている。

リベラル・メディアや民主党、欧州の指導者たちがこうした非難をし続けているのは残念だ。それは全くの虚偽だ。

トランプ氏は何年も前から、ウクライナが負けつつある消耗戦を止めることが最優先だと述べてきた。ウクライナの兵力は消耗している。だからこの戦争を止めようとすることは不道徳ではなく、ロシアに肩入れしているわけでもない。

残念ながら、ロシアが軍事力で奪った領土を放棄させる現実的な方法はない。現状で最善の策は、戦争を停止させた上で、恒久的な解決とウクライナの領土返還に向けた長期的な交渉を始めることだ。だが、近い将来に取り戻すことは困難だろう。

――トランプ氏は、ホワイトハウスでの会談で、ゼレンスキー氏に対して「第3次世界大戦を賭けてギャンブルしている」と述べたが、この発言にはどういう考えがあるのか。

核保有国との武力紛争に巻き込まれるのは常に危険なことだ。だからこそ今回の戦争は危険なものになっている。トランプ氏がそれに関与しなかった理由もそこにある。

トランプ米大統領(写真右)とウクライナのゼレンスキー大統領(写真左)=2025年2月28日、ワシントンDC(UPI)

――トランプ政権は、停戦合意のためウクライナが領土の一部を放棄すべきだと考えているか。

停戦合意や恒久的な紛争解決に、どうたどり着くかという問題については、トランプ政権の方針はまだ定まっていないと考えている。

私の意見としては、ウクライナは領土について一切譲らないまま、現在の戦線に沿って新たな境界線を引くことが最善の解決策だ。そして、長期的な交渉の中で、ウクライナが領土を取り戻すことを議論することになる。同様のことは、リベラルなシンクタンク「外交問題評議会」のリチャード・ハース名誉会長も提案している。

戦争終結させ中露分断を

――ロシア側は停戦交渉を通して何を得ようとするか。

ロシアとの交渉が容易でないことに異論はない。私は、ロシアの目的が孤立を解消し、制裁解除を勝ち取ることであることを願っている。そして、米国や西側諸国とロシアの関係を正常化しようとするトランプ氏の取り組みに応じることを望む。

経済に大きな打撃を与えたこの戦争を終わらせることで、ロシアが得るものは大きい。だから、ロシアがトランプ氏の意見に耳を傾け、この短い機会を生かし、国民のためにこの悲惨な戦争を終わらせることを期待する。

――トランプ氏には停戦交渉を通じてロシアを中国から引き離そうという狙いもあるのか。

トランプ氏がそう考えているかは分からないが、それが米国の対ロシア政策の目標であるべきだ。欧米との関係を正常化することで、より良い未来があることをロシアに知らせるとともに、欧州の友好国になるべきだと認識させることだ。ロシアはアジアの大国というより、欧州の大国であるからだ。

――停戦交渉が始まった場合、欧州諸国はそのプロセスにどう関与するか。

すでに関与している。トランプ氏と欧州諸国の間では常に話し合いが行われている。彼らはミュンヘン安全保障会議で何度も何度も対話した。

ゼレンスキー氏についても同様で、ウクライナがプロセスに参加していないと主張しているが、それは事実ではない。ゼレンスキー氏とトランプ氏、そしてトランプ政権高官との会談は何度も行われている。

欧州諸国は交渉のテーブルに着きたがっているが、それが実現するとは思えない。だからといって、彼らがプロセスに加わっていないことにはならない。

――ウクライナ戦争が終結した場合、国際情勢にどう影響があるか。

ウクライナでの戦争を終わらせることは、世界の安全保障にとって極めて重要だ。なぜならロシアとの関係を正常化することができるからだ。

ロシアとイラン、北朝鮮との軍事的関係や、中国との非常に危険な関係を断ち切ることができる可能性がある。すべてはこの戦争を終わらせることができるかに懸かっている。私は戦争終結が世界の安全保障のゲームチェンジャー(状況を一変させる出来事)になることを期待している。


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