トップ国際北米世界に「常識」取り戻す 愛国でグローバリズムに対抗 【連載】怒涛のトランプ改革―米識者に聞く(1)世界政治学院学部長 ジェームズ・ロビンズ氏(上)

世界に「常識」取り戻す 愛国でグローバリズムに対抗 【連載】怒涛のトランプ改革―米識者に聞く(1)世界政治学院学部長 ジェームズ・ロビンズ氏(上)

James S. Robbins 米国防大学教授、国防長官室特別補佐官、ワシントン・タイムズ紙上級論説記者などを歴任。現在、外交・安全保障分野を専門にするワシントンの大学院「世界政治学院(IWP)」学部長。米国外交政策協議会上級研究員、USAトゥデー紙コラムニストも務める。
トランプ米大統領が1月20日に再就任してから1カ月。矢継ぎ早に打ち出す大胆な政策や方針は、国内外の既存の秩序や概念を覆すほどの勢いだ。「怒涛(どとう)のトランプ改革」をどう見るか、米国の識者に聞いた。(聞き手=本紙主幹・早川俊行)

――トランプ氏は就任演説で「コモンセンス(常識)革命」を始めると宣言した。

現代の進歩主義の問題点は、現実を否定するよう求めていることだ。例えば、男性と女性は社会的要素だけで定義でき、男性でも女性と自認していれば、女子スポーツへの参加を認めるべきだというのだ。

トランプ氏はこれを禁じる大統領令に署名した。生物学的な男性が女性とスポーツで競争するのは本質的に不公平だからだ。トランスジェンダーの生き方はその人の自由だが、生物学の現実は認めよう、これが常識革命の一例だ。

ホワイトハウスのイーストルームで行われた「女子スポーツに男性を参加させない」大統領令の署名式でスピーチするトランプ米大統領=2025年2月5日、ワシントンDC(UPI)

また、進歩主義者たちは好きなだけお金を刷ってもインフレは起きないと言っていた。だが、バイデン前政権はそれをやってインフレを起こした。お金を刷れば刷るほど、その価値は下がる。これは常識だ。

イデオロギーに思考が支配されると、現実が吹き飛んでしまう。トランプ氏はプラグマティズム(現実主義)と常識を取り戻している。素晴らしいことだ。

――トランプ氏は「米国第一」を掲げ、グローバリズムの潮流を押し返している。

グローバリズムは国家主権を国際機関やオリガルヒ(新興財閥)に移譲し、人々の生活をコントロールしようとするものだ。自国の政府に対する権利や、文化・伝統を維持する権利までも損なわれることになる。

グローバリズムは国境開放・大規模移民を推し進めるが、米国が不法移民で溢(あふ)れ返り、彼らが選挙権を得て政府を支配すれば、この国の理念は破壊される。気候変動に関するアジェンダも、エネルギーから食料、人々の行動に至るまで、すべてを規制しようとする政治的プログラムと言っていい。

これらのグローバリズムのアジェンダは、自由や自治に対する深刻な脅威だ。グローバリストたちは自由や人間の自主性を嫌い、すべてをコントロールしたいのだ。

――最近まで多くの人がグローバリズムを肯定的に捉えていたが、トランプ氏の登場で世界の価値観は劇的に変わった。

その通りだ。ごく少数の超富裕層が押し付けるグローバリズムのイデオロギーは間違いであり、世界の大多数がそれを望んでいないことを、トランプ氏は声を大にして訴えているからだ。

米国は自由と西洋の道徳的伝統という理念に基づく国家だ。グローバリストたちはこれを消し去ろうとしている。だが、米国の理念を口にすることを恐れないトランプ氏によって、愛国心が復活している。他の国でもこれが起きている。素晴らしいことだ。

――バイデン前政権は日本にLGBT理解増進法の成立で圧力をかけるなど、リベラルな価値観を他国に押し付けた。

オバマ、バイデン両政権は、異様なまでに性的なライフスタイルの問題に執着した。彼らは同性愛やトランスジェンダーについて世界を教育しようと考えていた。

だが、現実は教育するどころか、多くの国々を遠ざけただけだ。同性愛で死刑になる国もある。国によって考え方は千差万別だ。より重要な問題に集中すべき時に、米国の世界戦略の一環として極端なライフスタイルを押し付けようとした進歩主義者たちの執着は、逆効果で愚かでしかない。

日本も過激な左翼思想根絶を

――レーガン元大統領は退任演説で、米国は世界に希望をもたらす「光輝く丘の上の町」だと強調したが、トランプ氏の下でその理念はよみがえるか。

そうあってほしい。「丘の上の町」はピルグリム・ファーザーズのジョン・ウィンスロップが用いた言葉で、トランプ氏なら可能だと思う。本人も米国が模範となって、中国や北朝鮮、イランなどの権威主義体制で抑圧される人々にインスピレーションを与え、自由を広げたいと思っているはずだ。

米国の自由の本質は、自分の望むように生きる自由だ。それは世界の抑圧者たちやグローバリストたちが嫌うものだ。トランプ政権はレーガン流の米国観を復活させようとしている。

――トランプ氏は強力な指導力で過激な左翼イデオロギーを排除している。既に各国の保守勢力にとっては模範と映っている。

それは良いことだ。過激なイデオロギーは、教育制度から政府・官僚機構、企業、メディア、購入する製品に至るまで、あらゆるレベルにはびこっており、根絶しなければならない。そして言論・表現の自由、知的多様性を取り戻すのだ。

日本を含め各国がそうしていけば、社会的、政治的、経済的に良い方向に向かう。われわれを押さえ付けてきたこのイデオロギーの枠組みから抜け出そうではないか。

――日本は過激な左翼イデオロギーにどう対抗していけばいいか。

日本が日本であること、そして自国の歴史や伝統、日本を世界の中で比類のない素晴らしい国にしてきたものに目を向けることが極めて重要だ。

進歩主義者たちが米国の歴史を攻撃するのは、米国を奴隷制度や抑圧、性差別などあらゆる悪事が起きたひどい場所のように見せたいからだ。しかし、米国の歴史には偉大なものがたくさんある。これに焦点を当てることが反撃となる。

これは日本でも同じだと思う。日本の偉大さに目を向け、誇りを感じてほしい。左翼イデオロギーは恥を感じさせることで、人々をコントロールするからだ。日本の根源や素晴らしさを発見し、愛着を持ち、宣伝していく。それが一つの戦い方だ。

ただ、それだけではなく、日本の制度から左翼イデオロギーを取り除くトランプ氏のような指導者がいなければならない。

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