
「政府の武器化」を問題視
【ワシントン早川俊行】バンス米副大統領が5日、ワシントンで開催された国際会議「国際宗教自由(IRF)サミット」で演説したことは、トランプ政権が国際的な信教の自由擁護を外交政策の優先課題に位置付け、その取り組みを強化していく姿勢を示すものだ。
「米国の外交政策の中で、信教の自由を尊重する政権とそうでない政権との違いを認識し、区別しなければならない」
バンス氏は国内外から集まった人権活動家や専門家らを前にこう語り、信教の自由を侵害する国には、厳しい対応を取る必要があるとの考えを強調した。「米国第一」を掲げるトランプ政権の外交政策は実利優先のイメージが強いが、バンス氏は「何かが間違っていれば、行動する道徳的明確さを持たなければならない」とし、宗教迫害の事例には価値観優先で断固とした行動を取る意向を表明した。
トランプ政権は米国内の信教の自由擁護にも力を入れており、バンス氏は「政府の武器化を終わらせる」ことを強調した。バイデン前政権下で、宗教的信念に基づいて中絶反対活動を行ったキリスト教徒が逮捕される事例が相次いだためだ。政府による司法の悪用を止めさせる必要があるとの認識から、トランプ政権は司法省や連邦捜査局(FBI)の抜本改革を推し進めている。
「政府の武器化」に対する懸念は、日本も無関係ではない。IRFサミットでは、日本政府に対してそうした批判が出たからだ。米政府諮問機関「米国際宗教自由委員会(USCIRF)」の委員長を務めたカトリーナ・ラントス・スウェット氏は、前日のパネルディスカッションで、日本政府による世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)への解散命令請求を「法の武器化、司法の武器化、メディアの武器化と呼ばれるものの一例だ」と呼び、トランプ政権に介入を求めた。
バンス氏は一方、信教の自由を巡る前政権の取り組みは「腐敗し、歪んでいた」と批判。「世界中に無神論を広めることに専念する海外のNGOに何十万ドルもの税金を送っていたのはどういうことか。これは信者の権利を守るリーダーシップの姿ではない」と述べ、左翼人権団体への資金提供を停止する方針を示した。