
【ワシントン山崎洋介】人工妊娠中絶反対派による大規模デモ集会「マーチ・フォー・ライフ」が25日、米首都ワシントンで行われた。トランプ政権発足から間もない今回、バンス副大統領が集会に参加。ノースカロライナ州を視察中だったトランプ大統領もビデオメッセージを寄せた。
カトリック教徒であり、中絶反対派として知られるバンス氏は就任後初となる演説で、「米国にはもっと多くの子供が必要だ。そして、彼らをこの世に迎え入れ、育てることに熱心な美しい若い男女を必要としている」と強調。中絶の過程で生きて生まれた新生児に対して医療措置を講じることを義務付ける法案へ強い支持を表明したほか、児童税額控除の拡大を目指す考えを示した。
トランプ氏は、集会の前日の24日、中絶クリニックの入り口を封鎖したなどとしてバイデン政権下で起訴された23人の中絶反対派の抗議者を恩赦した。これについて保守派は、中絶賛成派の抗議者が、中絶反対派の施設や教会などで破壊行為などを行っても起訴されていないケースがあり、法律が公平に適用されていないとして反発していた。
トランプ氏はビデオメッセージで、恩赦について「バイデン政権によって祈り、信仰を実践したために迫害されたキリスト教徒やプロライフ(中絶反対派)活動家」であり、「法執行機関の武器化の犠牲者」だと主張。「米国で宗教的迫害が二度と起こることは許されない」と訴えた。
トランプ氏は昨年の大統領選で、全米レベルでの中絶禁止法に反対し、州の判断に委ねる考えを示した。これを巡っては当時、中絶反対派の一部から反発の声が上がったが、今年の集会では、中絶禁止法については強調されず、「中絶を考えられないものにする」などと、文化を変えることに焦点が当てられていた。
トランプ氏は1期目で、連邦最高裁に保守派判事3人を指名。その後2022年に、妊娠中絶を権利として擁護した「ロー対ウェイド判決」が覆された。集会は、ロー判決が下された翌年から毎年実施されており、今回は51回目。参加者たちは「私はプロライフ世代だ」などと書かれたプラカードを掲げながら、ワシントン記念塔周辺から連邦議会議事堂前まで行進した。
これまで20回ほど参加しているというクリスティーン・ヒンツさん(72)は、中絶反対派への恩赦について「神がトランプ大統領を使ってプロライフ活動家たちを解放してくれた」と感謝を示した。