トップ国際北米トランプ米政権、「大量強制送還」計画開始 犯罪歴のある不法移民優先

トランプ米政権、「大量強制送還」計画開始 犯罪歴のある不法移民優先

昨 年 7 月 、 ウ ィ ス コ ン シ ン 州 ミ ル ウ ォ ー キ ー で 開 催 さ れ た 共 和 党 全 国 大 会 で 演 説 す る 「 国 境 担 当 責 任 者 」 の ト ム ・ ホ ー マ ン 元 移 民 税 関 捜 査 局 ( I C E ) 局 長 代 理 ( U P I )

トランプ米政権は、就任後、最優先事項として掲げる不法移民の「大量強制送還」に真っ先に取り掛かる方針だ。まずは公共安全に直結する犯罪歴のある不法移民対策を重視する考えだ。バイデン政権下で急増した不法移民問題対策への世論の支持は高いが、実現には、課題も多い。(ワシントン山崎洋介)

米メディアによると、トランプ政権は21日にも不法移民に対する強制送還を開始する。トランプ氏が「国境担当責任者」として起用した元移民税関捜査局(ICE)局長代理のトム・ホーマン氏は、まずギャングメンバーや犯罪歴のある不法移民を優先的に強制送還する計画だと説明してきた。

ピュー・リサーチ・センターによる推計によると、米国には2022年の時点で約1100万人の不法移民がいる。ホーマン氏によると、このうち罪を犯した不法移民は約150万人いる。

不法移民による犯罪を巡っては、米国で犯罪歴のある不法移民が釈放後に再び罪を犯すケースが相次いだことから、大きな話題となり、不法移民に寛容なバイデン政権への批判を高めた。

最も注目を集めたケースは、24年2月にジョージア州でジョギング中に襲われ、殺害されたレイクン・ライリーさんの事件だ。犯人はベネズエラ国籍の不法移民で、22年にメキシコから不法入国した際に国境警備隊に拘束されたが、米国内に釈放された。その後、23年には、ニューヨークで万引きなどで2度逮捕されたが、いずれも同市警によって釈放された。

こうした事件は、強制送還がなされていれば防げた事件であった。こうした中、問題視されたのが、米国の都市や州など560以上あるとされる「聖域都市」の存在だ。地元の警察が連邦政府の移民当局と協力しないことが多く、不法移民の摘発や強制送還が難しくなる。

共和党が主導する下院では、不法移民対策を強化する法案「レイクン・ライリー法」が8日に可決された。これは、窃盗や強盗などの犯罪で逮捕された不法移民を拘束することを義務付けるもので、共和党だけでなく48人の民主党員の支持を得た。上院でも20日、共和党議員に加え12人の民主党議員が賛成し通過。発足間もないトランプ政権にとって大きな立法上の勝利となった。

ホーマン氏は、聖域都市においても、不法滞在者に対して移民法の執行を進める考えだ。連邦補助金の停止や、不法移民を「故意にかくまう」職員の起訴を求める可能性について言及するなど、強硬な姿勢を示している。

こうしたトランプ政権に対して、一部の聖域都市が強く反対している。コロラド州デンバー市長マイク・ジョンストン氏(民主党)は、トランプ政権の大量強制送還計画に強く反対し、ICEと協力しない方針を示している。トランプ政権とこうした聖域都市との対立は、今後も続き、法廷闘争に発展することが予想される。

一方、聖域都市の中には、一定の協力姿勢を示す動きも出ている。ニューヨークのエリック・アダムズ市長(同党)は、17日にトランプ氏と会談した。これまでバイデン政権の不法移民対策を公然と批判してきた同氏は、トランプ政権による不法移民の大量強制送還には反対としつつも、協力する用意があるとしている。

ニューヨーク・タイムズ紙が今月上旬に実施した世論調査によると、すべての不法移民の強制送還を55%が支持。特に犯罪歴のある不法移民の強制送還については87%が支持している。

ただ、トランプ政権による大量送還の具体的な計画は、まだ明らかになっていない。犯罪を犯した不法移民に加え、亡命申請が却下され国外退去命令を受けたにもかかわらず、依然として国内に留(とど)まっている人やビザの有効期限が切れた後も不法に滞在を続けている人たちも対象となる可能性がある。

犯罪歴のある不法滞在者を見つけ出すことは容易でないことも指摘される。大量の移民を拘束し、送還するためには膨大な予算と人員が必要となり、これらの予算を確保するためには、議会の承認が必要となる。また、家族の分離や長期間の拘束が問題視されるなど、人道的な懸念が生じる可能性もある。

不法移民問題への対応は、トランプ政権の支持率にも大きな影響を与えるだろう。多くの課題がある中、公約の目玉である不法移民の「大量送還」をどう実現していくか注目される。

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