
【ワシントン山崎洋介】トランプ米大統領は20日、人の性別を「男性と女性」の二つのみとする大統領令に署名した。これは「トランスジェンダーの狂気」を排除するとした、同氏の大統領選の公約を実現させるもの。バイデン政権が推進してきた左派イデオロギーからの、転換を図る第一歩として注目される。
この大統領令では性別を、「性自認」ではなく、「生殖機能」によって区別すべきだと明記。連邦政府機関は「ジェンダー(自己認識などに基づく性別)」ではなく「セックス(生物学的性別)」という用語を使用し、「ジェンダー・イデオロギー」を助長する声明や方針などを排除すべきだとしている。
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また、パスポートやビザなどの公式文書には、生物学的性別を正確に反映させるよう求めた。バイデン政権下で国務省は2022年、LGBTQなど性的少数者への配慮として、パスポートに記載する性別として「男性(M)」「女性(F)」とは別に、「X」を選択できるようにしていたが、新たな大統領令の下、廃止されることになる。このほか、女性の刑務所や移民シェルターへのアクセスを生物学的女性に限定するなどの方針が盛り込まれた。
これまで、性別の定義があいまいになったことで、米国では深刻な問題が起きていた。女子スポーツ界でトランスジェンダー選手が上位を席巻し、生物学的な女子選手が進学や奨学金の機会を失う事例が相次いだ。また、学校の女子トイレで、女装していた男子生徒による性的暴行事件も発生した。さらに女性刑務所に入ったトランスジェンダーの囚人が、女性を妊娠させる問題も起きていた。
保守系女性団体インディペンデント・ウィメンズ・フォーラムのベス・パルラト上級法律顧問は声明で、「性別が流動的であるという嘘(うそ)は、女性を消し去り、危険にさらす」もので、トランプ大統領による今日の大統領令は、「性別が二元的であり、女性が男性とは生物学的に異なるという真実の勝利」であり、「ジェンダー・アイデンティティーの刷り込みを拒絶することで、常識と理性を取り戻すことができる」と評価した。
一方、LGBTQの権利擁護を訴える団体は、今回の大統領令が「性的少数者らに害を及ぼす」などと反発しており、法廷闘争に発展する可能性もある。