トップ国際北米困難を伴うトランプ外交

困難を伴うトランプ外交

2024年が終わり、2025年が始まった。昨年11月の米国大統領選ではトランプ氏が圧勝したが、そのトランプ政権がいよいよ発足する。

これまでの政権人事を見ても、国務長官や安全保障担当の大統領補佐官など外交・安全保障の要職には相次いで対中強硬派が起用され、トランプ政権は就任初日から対中関税を10%上乗せする方針を示しており、米中間では引き続き火花が散ることになる。

●トランプ次期米大統領は露ウ戦争をどう治めるか

マクロン仏大統領は、ウクライナのゼレンスキー大統領(左)とトランプ次期米国大統領(右)予定外の三者会談を終え、別れを告げる。 2024年12月7日(UPI)

これまでのところ、トランプ氏はウクライナ戦争の終結に強い意欲を持っているように映る。しかし、事が上手くいく可能性は低い。バイデン氏やゼレンスキー氏と違い、トランプ氏はロシア軍がウクライナ領土を実効支配する現状での終戦を掲げているが、そこに自由や民主主義、法の支配といった価値や理念はなく、自らのレガシー作りの一環である可能性が非常に高い。

トランプ氏にとって重要なのは、内容ではなく結果であり、それを達成する上でウクライナ、ロシア双方に圧力や脅しを仕掛け、双方から譲歩や妥協を引き出そうとしている。

だが、プーチン氏がそれに満足することはなかろう。これまでの発言から、プーチン氏がクリミアやウクライナ東部のみの実効支配で満足する姿勢は皆無であり、首都キーウの掌握やゼレンスキー政権の崩壊、そして親露的な傀儡政権が発足するまで戦闘を停止することはない。

仮にトランプ氏の要請に応じて和平のテーブルに座っても、それは軍を再編成し、再び攻撃を開始するまでの休息期間でしかないだろう。そういう意味では、最初から屈辱的な停戦案を提示されるゼレンスキー氏より、プーチン氏の方がトランプ氏による終戦案に乗りやすいだろう。

●対北朝鮮はどうなるか

また、トランプ氏は北朝鮮の金正恩氏と再び会談を行う意欲を持っているようだが、トランプ政権1期目の時と今日では北朝鮮を取り巻く環境は大きく異なり、前回のように米朝首脳会談を積み重ねていくことは困難を伴うだろう。

両者はベトナム、シンガポール、板門店と3回も会談したが、結局のところ交渉は頓挫し、事が金正恩氏の思い描くようにはならなかった。金正恩氏がトランプ氏と再び会っても価値を見出せないと判断すれば、トランプ政権2期目では会談すら行われない可能性も十分にあり得よう。

トランプ政権1期目の際、韓国の大統領は北朝鮮に融和的な文在寅氏だった。文在寅氏の存在によってトランプ、金正恩両氏が接近することが可能だったとも言え、戒厳令で内政が混乱する韓国の現状を考慮すれば、米朝首脳の対面は以前のように簡単ではない。

さらに、ウクライナ戦争で北朝鮮兵が戦っているように、北朝鮮はロシアとの軍事的結束を強めており、両国は同盟国のような位置付けにある。

こういった北朝鮮が置かれる戦略環境を考慮すれば、トランプ氏の北朝鮮外交は前回とは別物になる可能性がある。政権2期目のトランプ外交は困難を伴う事が予測される。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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